馬産地コラム

あの馬は今Vol.47~F.S・ゴールドアリュール

  • 2009年03月25日
  • 今のゴールドアリュール~社台スタリオンステーション
    今のゴールドアリュール~社台スタリオンステーション
  • 同

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 2003年2月23日  第20回 フェブラリーS
             優勝馬 ゴールドアリュール

 「強いということは美しい」そんなことを教えてくれたのがゴールドアリュールだった。全国からダート自慢が集結したジャパンダートダービー(大井競馬場)で後続を7馬身突き放し、続くダービーグランプリ(盛岡競馬場)では10馬身差圧勝。逃げて、後続を突き放すレースぶりは痛快でもあった。秋のジャパンCダートは激しい先行争いに巻き込まれるような形で失速したが、東京大賞典(大井競馬場)では古馬相手に貫禄勝ちとも思える内容で完勝。同年のJRA最優秀ダートホースに輝くとともに、NARグランプリの特別表彰馬に選出された。そんなゴールドアリュールにとって、のどから手が出るくらいに欲しいタイトルがJRA競馬場で行われるG1タイトルだった。
 
 ドバイ遠征を控えて、陣営が壮行レース的に選んだのがフェブラリーS。この年は東京競馬場のスタンド改修工事の影響で、中山競馬場で行われることになっていた。奇しくも、前年秋、ダート競馬で初めて他馬の後塵を拝したジャパンCダートと同じ舞台。雪辱を期すという意味では、これ以上ない舞台設定になった。
 前年のJCダートで人気を二分し、先着を許したアドマイヤドン、ダート界の新星ビワシンセイキ、JCダートの覇者イーグルカフェ、前年の帝王賞勝馬であり、川崎記念を逃げ切って意気あがるカネツフルーヴら現役を代表するダート巧者が顔を揃えた1戦で、力の違いを見せたのがゴールドアリュールだった。序盤から消耗戦のような展開になり、そのハイラップは追い込み馬のスタミナをも奪う激しいものになった。次々と有力馬が脱落する中で、ゴールドアリュールは少しずつ前との差を詰め、4コーナーでカネツフルーヴを射程県内に入れると、早めに先頭にたって後続の追撃を退けた。名実ともにダート界の頂点にたったゴールドアリュールには、ドバイ遠征が計画されたが、イラク戦争の勃発により断念。その後、まるで緊張の糸が切れたかのように喘鳴症を発症。現役生活を退いて、2004年から社台スタリオンステーションで種牡馬になった。
 
 サンデーサイレンス初の、そして唯一のダートG1ウイナーとして馬産地の期待も高く、初年度に147頭の繁殖牝馬を集めたのをはじめ、2年目以降も189頭、136頭、132頭とコンスタントに配合数を確保。タケミカヅチ(皐月賞2着)スマートファルコン(ジュニアC)ら初年度産駒の活躍で2008年には自身最多となる204頭への配合を行った。
 その後、スマートファルコンは交流重賞を勝ちまくり、ダート路線に変更したエスポワールシチーは父を彷彿するような力強い逃げ脚質を見せている。「サンデーサイレンス直仔としては骨が太くて筋肉質。芝でもダートでも変わらないスピードが人気なんでしょうね」とスタリオンでは分析する。「がっちりした馬が多く、当歳から売りやすいという声もいただいています」という部分も人気の秘密らしい。もちろん、競馬場での成績も申し分なく、今年もトップカミングが牡馬クラシック戦線で活躍するなど期待に違わぬ活躍だ。
 
 現在は、社台スタリオンステーションで6年目のシーズンを送っている。「サンデーサイレンス系らしく種付には意欲的です。タフで頑張れるタイプですね」と頼もしそうだ。
 そんな激しさは微塵も見せずに、放牧地では、人の影を見つけると寄ってくる人懐っこさをみせる。芝で、ダートで活躍馬を送る同馬、今度はどんな産駒で私たちを楽しませてくれるのだろうか。

                日高案内所取材班