馬産地コラム

あの馬は今Vol.42~JC・ディープインパクト

  • 2008年11月29日
  • 今のディープインパクト~社台スタリオンステーション
    今のディープインパクト~社台スタリオンステーション
  • 同

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 2006年11月26日 
  ジャパンカップ  優勝馬 ディープインパクト


 実は、いまでもディープインパクトの取材はちょっと照れる。競馬場で、厩舎で、どのような取材態勢が敷かれていたかは知らないが、偉大なる“7冠馬”はスタッドインを果たしても取材合戦は過熱を極めていた。
 社台スタリオンステーションに到着し、馬運車を降りる瞬間。初めての放牧。そして、初めての種付。大袈裟ではなく、その一挙手一投足すべてが報道の対象になった。馬産地取材を“ホーム”としている身としては、そのフィーバーぶりをちょっとばかり斜に構えてみたくなっていた。
 
 あれから、約1年半。社台スタリオンステーションは“日常”を取り戻していた。
「2年目のシーズンは、粛々と仕事をこなしていた。そんなイメージですね」と徳武英介さん。「現役時代から大きな馬ではないですが、体高は父(サンデーサイレンス)と同じですから、小さいということないです。それでも風格みたいなものが出てきて、大きく見せますよね」という。

 現在、ディープインパクトは社台スタリオンステーションの見学できる放牧地にいる。
 シーズンともなれば見学台にのぼれなくなるほどの人間で賑わうが、秋から冬に季節が移る11月下旬は人もまばら。11月22日からは馬服を着用しての放牧に切り替わった。そして、ディープインパクトには、夏も冬も雨の日も雪の日も専属の警備員が常駐して静かに同馬を見守っている。
 「一ヶ所にじっとしていることは少ない馬ですが、馬服を着てからは動きにくいのか寒いからなのか、動きが少なくなったかな」と笑う。季節の移ろいは、確実に3年目シーズンが近づいていることを示している。
 
 今春生まれた初年度産駒は、大ブレイクを期待したマスコミを裏切り結果となったようだが、売却された31頭の平均価格は6000万円は超えて、従来のレコードを大きく更新した。馬産地の期待は大きい。
 「この秋は、アジア競馬会議に出席した人たちの一部が馬産地見学を行いましたが、やっぱりディープインパクトが一番人気でした。改めて偉大な馬なんだなって思いましたね」と徳武さん。気がつけば、ディープインパクトは、1頭の競走馬という枠を超えた日本産サラブレッドのシンボルのような存在になっていた。
 おそらく、その初年度産駒がデビューするとき、再びディープインパクトのまわりは騒々しくなることだろう。それまで、あと1年半。それまでは、そっとしておいてあげたいと思う。

                 日高案内所取材班