馬産地コラム

あの馬は今Vol.38~皐月賞・アグネスタキオン

  • 2008年07月11日
  • 今のアグネスタキオン~社台スタリオンステーション
    今のアグネスタキオン~社台スタリオンステーション
  • 同

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 2001年4月15日  皐月賞
優勝馬 アグネスタキオン

 父サンデーサイレンスが、昨年まで13年間守り続けたサイアーランキングトップの座を、今、アグネスタキオンがひた走っている。
今年は、皐月賞、NHKマイルC、ダービーと春のG1レースを3勝したのをはじめ、毎週のように産駒が競馬場で活躍しているから「あの馬はいま」というタイトルは似つかないかもしれない。
 
しかし、雨中で行われた引退式から早くも7年の月日が過ぎた。美しい栗毛の馬体はひとまわり貫禄をましたが、アグネスタキオンはいまも社台スタリオンステーションで多忙な日々を送っている。温和な表情が現在の充実振りを物語る。その姿を一般者用の見学台から確認できるのが嬉しい。広い放牧地を与えられているが、いつも出入り口に近い、同じような場所で過ごしている。ときおり、小走りの仕草を見せるがラチ沿いが好きなようで、放牧地の真ん中にいるところはあまり見たことがない。「賢い馬なんですよ。無駄なことに体力は使わない馬です」とスタッフのひとりが言う。種付シーズンは厩舎と放牧地の出入りが多いから敢えて出入り口の側から離れないのかもしれませんね、とたずねたら「そんなことはないと思いますけど」と苦笑いをされてしまった。なんてことはない。アグネスタキオンは取材者の気配を察していつもラチ沿い、出入り口の側まで迎えてくれていたのだ。
 
「こんな馬は作ろうと思ってできるものではありません。神様からの授かりものです」と言ったのは故・成田春男マネージャーだった。
 「凄い馬ですよ。産駒はどんな競馬でも出来る自在性があります。内面に秘めた激しさを表に出さないところが凄いところです」と事務局ではアピールする。初年度から3世代連続でG1ウイナーを輩出したという意味ではサンデーサイレンス以来の快挙。ノーザンテーストもリアルシャダイもトニービンもブライアンズタイムも為しえることはできなかった。
 もし、仮にこのままサイアーランキングのトップを死守すれば1957年のクモハタ以来半世紀ぶりに内国産馬によるJRAチャンピオンサイアーとなる。それは、ある意味でこの馬が現役時代に成しえなかった「国民的ヒーローのサラブレッドを生産する」という社台ファームの悲願にも直結するものなのかもしれない。
 
7度目の種付シーズンが終わり、いまはのんびりと体を休めるとき。まったくの主観だが、栗毛の体というのは鹿毛や青鹿毛に比べてかわいく見える。頭を下げて、少しでもおいしそうな青草を求めて放牧地を歩きまわる姿が、なんとも愛らしくて、頼もしい。

                日高案内所取材班