馬産地コラム

あの馬は今Vol.57~ソングオブウインド

  • 2009年10月25日
  • 優駿SSで種牡馬生活を送っているソングオブウインド
    優駿SSで種牡馬生活を送っているソングオブウインド
  • 同

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2006年10月22日 菊花賞(G1)
優勝馬 ソングオブウインド


 時をかさねるほどに重みが増す事実がある。エルコンドルパサーが残した足跡だ。

 不敗のままNHKマイルC(G1)に勝ち、ジャパンカップ(G1)では日本調教の3歳馬として初めて優勝。エアグルーヴや同世代のダービー馬スペシャルウィークらを相手に影をも踏ませぬ快走劇を演じた。年が明けると、勇躍欧州遠征を敢行し、サンクルー大賞典(G1)、フォア賞(G2)を連勝。凱旋門賞(G1)でも、モンジューの2着と健闘した。ディープインパクトやメイショウサムソンでも超えられない厚く、高い壁。敗れたとはいえ、欧州最強3歳馬とのマッチレースは今も記憶に鮮烈に残っている。

 種牡馬としてはわずか3シーズンしか供用できなかったが、その足跡は永遠だ。種牡馬としても3頭のG1ウイナーを残したエルコンドルパサーだが、唯一のクラシックウイナー。それがソングオブウインドだ。

 初勝利までは5戦を要したが、一気にオープンまで駆け上がると菊花賞(G1)をレコード勝ち。その後、香港ヴァーズ(G1)4着のあと脚部不安を発症するとそのまま引退。まさに一瞬の風のような存在だった。

 4歳から社台スタリオンステーション荻伏種馬場で種牡馬となったソングオブウインドは、シーズン途中で新冠町の優駿スタリオンステーションに移動。現在に至るまでナリタブライアンが眠り、オグリキャップが過ごす同スタリオンで種牡馬生活を送っている。3年目の種牡馬シーズンは56頭の繁殖牝馬に配合した。

 「1年目、2年目が100頭前後でしたから、この馬としてちょっと楽なシーズンでしたね」と山崎努スタッドマネージャーがいう。「例年ですと、秋の入口くらいまで疲れが残るタイプだったですが、今年はすっかり元気です。食べたものが身になり過ぎないように管理しています」と貫禄を増した体にやや苦笑い。これからシーズンに向けては体作りが始まる。

 「穏やかな馬なんですよ。頭が良いんでしょうね。普段もおとなしい。周りで馬が騒いでいてもマイペースです」と言うのは担当の太田義明さん。放牧地では、ほとんどの時間を草を噛んで過ごしているそうだ。種付に関しても「1年目のシーズン途中で社台スタリオンステーションから来たときは、もうすでにベテランでした(笑い)」というほどに上手らしい。

 「エルコンドルパサーが残してくれた馬ですから、その血はつなげて欲しいと思います。おそらく、欧州ではもっとも有名な日本馬でしょうから」という言葉が真実だ。待望の初年度産駒は、来春にデビュー予定だ。
取材班