馬産地コラム

あの馬は今Vol.46~有馬記念・グラスワンダー

  • 2008年12月29日
  • 今のグラスワンダー ~ 日高町 ブリーダーズスタリオンステーション
    今のグラスワンダー ~ 日高町 ブリーダーズスタリオンステーション
  • 同

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 1999年12月26日 
  有馬記念
  優勝馬  グラスワンダー

 12月の中山競馬場になると、グラスワンダーを思い出す。不敗の3連勝で挑んだ朝日杯3歳Sで1分33秒6の驚異的なレコードタイムを記録。エルコンドルパサーとともに外国産ブームの火付け役となった。骨折のために不本意なレースを強いられた翌年も、日、いちにちと下がる気温と反比例するかのように体調を向上させて有馬記念に優勝。同年春の王者メジロブライト以下を寄せ付けない強さで、外国産馬として初めてグランプリにその名を刻んだ。
 
 圧巻は4歳時だ。海外へ活躍の場を求めたエルコンドルパサーとは対照的に国内にこだわりをみせたグラスワンダーは、有馬記念優勝馬としては異例中の異例ながら、京王杯スプリングCから始動。安田記念こそエアジハードに不覚をとったが、春の最大目標である宝塚記念で天皇賞馬スペシャルウィークを一蹴。さらには毎日王冠も制して有馬記念に駒を進めてきた。そして、再度スペシャルウィークをハナ差退け、また若きテイエムオペラオー以下に快勝した。
 “グランプリレース3連覇”とともに“12月の中山競馬場のG1レース3連覇”の瞬間でもあった。
 
 そのグラスワンダーは、現在、日高町のブリーダーズスタリオンステーションで種牡馬生活を送っている。産駒をデビューさせた2004年以降、5年連続で重賞勝馬を送るようにコンスタントな種牡馬成績をおくる一方、今年はセイウンワンダーが朝日杯を勝って父仔制覇を成し遂げ、マルカラスカルが春の中山グランドジャンプを制覇。さらにはスクリーンヒーローがジャパンカップに優勝した。
 「2歳、古馬、障害と、こんなにさまざなカテゴリーで、次々と勝ってくれるとは…」という嬉しい誤算に種牡馬事務局、スタリオンスタッフも喜びを隠せない。
 
 当のグラスワンダーといえば、大好きな砂浴びで担当厩務員さんを苦笑いさせている。「冬場になると、放牧地の芝が悪くなるから泥を落とすのが大変なんです」と泥がこびりついた体をブラッシングしながら笑顔で馬に語りかける。
 坂本教文主任によれば「テンションがあがるときもありますが、それは種牡馬としては当たり前のこと。むしろ、おとなしい方ですよ。来年は忙しいシーズンになりそうなので体調管理に気をつけてシーズンに挑みます」と頼もしいメッセージをあずかった。

                日高案内所取材班