馬産地コラム

あの馬は今Vol.21~高松宮記念・マサラッキ

  • 2007年03月27日
  • 今のマサラッキ~浦河・日進牧場
    今のマサラッキ~浦河・日進牧場
  • 同

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1999年5月23日 高松宮記念 優勝馬 マサラッキ

 国道275号線をひたすら東へ。浦河町が誇る軽種馬育成調教センターに隣接するように日進牧場の広大な放牧地がある。天皇賞・秋を勝ったホクトボーイや2冠馬ミホシンザンなどの生産牧場としても知られているが、近年では、中期育成牧場のパイオニア的存在としてスポットライトを浴びている牧場だ。日高幌別川に沿うように広がる放牧地で、穏やかな春の陽射しを浴びた1歳馬がおだやかに時間を過ごしている。
 その一角に第29回高松宮記念優勝馬マサラッキがいた。6歳夏のG1初制覇。「G2、G3は勝てるが、G1レースでは善戦止まり」という評価が定着し始めた矢先の優勝だった。キョウエイマーチがつくる前半3ハロンが32秒8というハイペースを早めに追いかけて、シーキングザパール、シンコウフォレスト、キョウエイマーチ、アグネスワールドといったG1ウイナーたちの2着争いを尻目に外から豪快に伸びた。その激しさは春の短距離王にふさわしいものだった。
 それから8回目の春。8歳夏の函館スプリントSを最後に現役生活を退いた同馬には、乗用馬にという報道もあったが「牧場にとっての功労馬だから」と種牡馬としての再出発を決めた。「こんな時代ですから、いかにG1優勝馬と言っても、繁殖牝馬集めは厳しいですよね。ウチはそれなりには配合しているのですが、受胎率が思わしくなくて…」と同牧場の清野寛一場長が頭をかいた。
 現在は朝の5時から夕方3時頃までの放牧。筋肉質な栗毛の馬体は無駄肉がなく競走馬時代の面影を十分に残している。「賢い馬なんだよね。放牧地を走り回ることはほとんどないおとなしい馬なんですが、自分で体をつくっているんだろうね」と目を細める。。出走した2頭の産駒はいずれも地方競馬で勝馬となっているが、種牡馬としては「開店休業状態です」と苦笑い。それでも、ファンはありがたいもので誕生日やクリスマスには今でもプレゼントが届くという。
 「馬自身はとても元気です。まだ14歳。これからという気持ちもありますが、いつまでも元気で過ごしてくれることが一番嬉しいですね」とマサラッキを見る目は誇らしげだ。

                 日高案内所取材班