馬産地コラム

あの馬は今Vol.15~JC・タップダンスシチー

  • 2006年12月02日
  • 現在、同馬を担当するのは「現役時代からのファンでした。ウチにくると聞いて驚きましたけど、携わることができて嬉しいです」という村尾隆平さん。
    現在、同馬を担当するのは「現役時代からのファンでした。ウチにくると聞いて驚きましたけど、携わることができて嬉しいです」という村尾隆平さん。
  • 「担当を決めるというよりも、彼に任せるしかないと思いました」というスタッフ全員に見守られながら、二人三脚で頑張っている。
    「担当を決めるというよりも、彼に任せるしかないと思いました」というスタッフ全員に見守られながら、二人三脚で頑張っている。
 第23回ジャパンカップ 2003年11月30日 
 優勝馬 タップダンスシチー

 9月下旬。行き交う競馬関係者のあいさつ代わりは、ニッポン最強馬が挑む“凱旋門賞”になっていた。世界中から一流馬が集う、ケイバワールドカップ。出走するだけでも名誉なこのレースには、日本からも過去、多くの名馬が挑戦したが、長い歴史の中で欧州調教馬以外はただの1頭も優勝していないという伝統の前に敗れ去った。タップダンスシチーもその中の1頭だ。
 「でも、ジャパンCの9馬身差圧勝と、金鯱賞3連覇は、普通の馬ではできない大偉業だと思います」と胸を張るのは、現在、同馬を繋養するブリーダーズスタリオンステーション(日高町)の坂本教文主任だ。外国産馬のためにクラシックレースは不参加だったが、5歳時の朝日チャレンジCをレコードで快勝すると、8歳で引退するまで、長く一線級で活躍した。
 「長く競馬を使ってきたからでしょうか。おっとりとしていて、とても落ちついた馬ですよ。良い意味でおとなびた馬ですね」。種付も初めてとは思えないほど上手で、それでいて受胎率も高そうだ、と評判も上場だ。
 「展示会や、実馬を見て、あるいはこの馬の種付をみて、自分の繁殖牝馬にも種付しようと思った生産者が多かったですね。馬を預かる身としては嬉しい限りです」と目を細める。そうした後押しもあって、今年は163頭もの繁殖牝馬に種付を行った。シンジケートを組まない新種牡馬としては異例ともいえる多さである。
 「最初の年に多く配合すると、次年度以降の種付が楽なんです。馬はちょっとビックリしたかもしれませんが、無理させたわけではないので、来年以降が楽しみです」と、頬を緩ませた。
 取材日は平日だったが、次々と車がスタリオンに乗り入れてくる。「この馬が来てから、見学者は増えました」という人気者。馬房の前にはファンから送られてきたお守りなどが結わいつけられている。
 「こうしたファンのためにも、良い仔を出してほしいですね。幸い、産駒の数は多くなりそうなので、期待してください」と感謝の気持ちを表した。

               日高案内所取材班