馬産地コラム

あの馬は今Vol.32~マイルCSアグネスデジタル

  • 2007年11月15日
  • 今の(今夏撮影)アグネスデジタル~ビッグレッドファーム
    今の(今夏撮影)アグネスデジタル~ビッグレッドファーム
  • 同

  • 同

 2000年11月19日
マイルチャンピオンシップ 優勝馬 アグネスデジタル

 芝の初勝利がG1レース。そんな常識外の出来事が起きるには、それなりの序章があるものだ。第17回マイルチャンピオンシップ。この日の出走メンバーは過去のG1ウイナーが7頭。実力拮抗といえば聞こえがよいが、最終的に1番に人気になったのがG1未勝利のダイタクリーヴァというから、どの馬にもチャンスがある混戦模様と表現したほうが良いのかもしれない。そのダイタクリーヴァの単勝支持率は16・4%。単勝オッズ10倍以下の馬が5頭というメンバー構成も、どこか波乱含みだった。レースの1時間前にダイタクリーヴァに騎乗を予定していた高橋亮騎手が落馬して騎乗変更になったのも波乱に拍車をかけた。
 
 騒然とした雰囲気の中でのゲートイン。スタートは大外枠のブラックホークが一番早かったが、各馬がけん制しあうのを見て1番枠のヤマカツスズランが前にでる。ダイワカーリアンが2番手につけ、アンブラスモアが続き、各馬のポジション争いが激化する中、加速がついたヤマカツスズランはペースを落とさない。34秒0~45秒3~56秒9というハイラップと京都の難所といわれる3コーナーの坂が各馬のスタミナを奪い、逆に動けない。レースは消耗戦になった。4角をまわって植え込みを過ぎてもまだヤマカツスズランが先頭で頑張っている。しかし、脚色が一杯になるところにダイタクヤマトが襲いかかり、安藤勝己騎手に乗り変わったダイタクリーヴァがこれを追う。満を持してダイタクリーヴァが抜け出したところに襲い掛かってきたのはインからメイショウオウドウ、外からアグネスデジタル。ゴール前の歓声が悲鳴に変わり、アグネスデジタルが先頭でゴールへと飛び込んだ。
 
 あれから7年。種牡馬として4シーズン目を終えたアグネスデジタルは、ビッグレッドファームのパドックで自由な時間を過ごしていた。筋肉質全とした体は、やや貫禄を増したが、現役当時を彷彿させる。「ふだんはおとなくして手のかかるタイプではないですが、放牧地では結構歩き回ったり走ったりしますね。体を動かすのが好きなんでしょうね」と笑う。何が気に入らないのか、放牧地ではターンとダッシュを繰り返してビルドアップに励んでいる。
 「産駒は上々のスタートですね。本質的には晩成型だと思いますから、早い時期から結果を出してくれることに心強さを感じています」と育成スタッフ。「父親譲りの強い筋力を持つ産駒が多いようで、追って味のある産駒が多いですね。遺伝力の強さが証明されて、ほっとしています」と笑顔がこぼれた。

                  日高案内所取材班