1月24日、中山競馬場でアメリカジョッキークラブカップ(G2)が行われ中団でレースを進めたディサイファが、直線で先行各馬を交わして抜け出し外から追い上げてきたスーパームーンに1.1/4馬身の差をつけて快勝、14年エプソムC(G3)、15年中日新聞杯(G3)、札幌記念(G2)に続く重賞4勝目をマークした。

　ディサイファは日高町のダーレー・ジャパン・ファームの生産馬で父ディープインパクト、母ミズナ、母父Dubai Millenniumという血統。母ミズナは100頭近くいる繁殖牝馬の中でも1、2を誇る大型馬だと言われるほど雄大な馬体で、現在はハーツクライの仔の出産を控え、ゆったりとした時を過ごしている。

　繁殖マネージャー福原博さんはその日、自宅でレースを見守っていた。「2番人気でしたが距離的に長くはないかという心配をしていました。ですが、いざレースが始まるとスタートも良かったですし道中も好位をキープするなど、展開が素晴らしかったので安心してみていられました。武豊騎手にも上手く乗って頂いたと思います。この年になっても活躍してくれる姿をみられるっていうのは嬉しい事です。」と満面の笑み。「新聞では次はドバイという記事を目にしますので、行けるチャンスがあるなら是非挑戦して欲しいですね。」

　育成マネージャー三宅公彦さんは牧場でレースを観戦、「最後の直線に来るまでは完璧だったのであとは距離さえ合えば勝てると思っていました。今までもそれぞれのレベルのレースで安定した成績を残していますしこれからも期待したいですね。今年で7歳になりますが長く活躍してきて、まだ成長しているところも見えますし、楽しませてくれる馬だなと思います。種馬になって帰って来てもらうのが一番嬉しい事ですし、そうなれるようにこれからも頑張って欲しいです。」とそれぞれディサイファの活躍にあたたかいエールを送った。

　母ミズナは毎年順調に受胎し、仔だしが良くしっかり仔を産んでくれる、牧場にとっては宝のような存在だと話す福原さんは「性格はキツイですがその分精神面で闘争心の遺伝子を伝えやすいのかなと思います。体型は種馬の特徴が出ている仔が多いですね。ディサイファは華奢な体格でしたが柔軟性があり、扱いやすい性格でした。当歳のグループの中ではリーダー的な存在だったようです。」と当時を振り返ってくれた。

　半妹の父ストーミングホームの牝は1歳になった。近くで見守る三宅さんは「父似のコロッとした感じの体格で順調に成長しています。牝馬が生まれるとミズナ似のキツイ性格になる傾向があったのですが、この仔はそういうところはないです。来年のデビューが楽しみですね」また、オーナーブリーダーの強みを「ケガを恐れず夜間放牧や昼夜放牧で身体を鍛えられる事」と話す。その放牧地は土壌管理を確りするために毎年海外から専門家を招いたり、牧場のメンテナンススタッフが草地を管理するなど細かな配慮がなされているそうだ。自然に近い環境で手をかけ過ぎずリラックスさせながらもポイントでのチェックを欠かさない、そんなスタッフの心掛けでディサイファも強くなって行った。

　これから出産、種付けと忙しくなるシーズンを前に福原さんは「重賞に勝てるような馬を毎年1頭でも多く生産できるよう努力して行きたいです。ダーレーの馬を応援して頂けると私達の糧になります。」三宅さんは「アメリカに帰ったストリートセンス産駒のデビューが楽しみです。」と笑顔を見せながらも「ダーレーのポテンシャルを発揮できるように頑張って皆様の期待に応えたいです」と表情を引き締めた。

　遅咲きだったのかもしれない。だが通算成績の3分の2は3着以内という抜群の安定を誇っているディサイファ。これからも進化を続け長く活躍し、後に続く後輩に道標を示してくれるだろう。