重賞ウィナーレポート

2015年10月25日 菊花賞 G1

2015年10月25日 京都競馬場 晴 良 芝 3000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:キタサンブラック

プロフィール

生年月日
2012年03月10日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:7戦5勝
総収得賞金
1,876,843,000円
ブラックタイド
母 (母父)
シュガーハート  by  サクラバクシンオー
馬主
(有) 大野商事
生産者
ヤナガワ牧場 (門別)
調教師
清水 久詞
騎手
北村 宏司
  • レース後、万歳で喜び合う牧場の皆さん
    レース後、万歳で喜び合う牧場の皆さん
  • 梁川正克会長、正普代表は現地で応援
    梁川正克会長、正普代表は現地で応援
  • ヤナガワ牧場は繁殖牝馬約30頭、スタッフ10名が働く
    ヤナガワ牧場は繁殖牝馬約30頭、スタッフ10名が働く
  • 勝利を喜ぶ日高軽種馬共同育成公社の皆さん
    勝利を喜ぶ日高軽種馬共同育成公社の皆さん
  • 後期育成では2012年7月に完成した新坂路コースを走った
    後期育成では2012年7月に完成した新坂路コースを走った

 牡馬クラシック最後の栄冠、菊花賞(G1)はキタサンブラックが優勝。道中は好位のインでじっと我慢し、直線で弾けるようにライバルを交わし去った。

 本馬のふるさとは日高町のヤナガワ牧場。過去にはダートG1馬サンライズバッカスやプライドキムを輩出し、現役ではコパノリッキー、コパノリチャードがダート、芝短距離のチャンピオンホースとして活躍している。現在、3年連続で生産馬がG1制覇しており、近5年のリーディングブリーダー・ランキング(サラブレッド総合)では、19位→20位→14位→11位→9位(2015年11月現在)と順位を上げている。

レース当日、同牧場の梁川正克会長、梁川正普代表は現地・京都競馬場で観戦しており、牧場では会長夫人の弘子さん、代表夫人のあゆみさんが長丁場を見守っていた。先頭でゴールを切ってから1時間もしないうちに、日高町の三輪茂町長や近隣の牧場主が祝福に駆けつけた。事務所には立て続けにお花、お酒が届けられ、電話の鳴る音が響いた。祝福の嵐の中、G1恒例の万歳写真を撮り終えると、弘子さんを地元紙の記者たちが取り囲んだ。

 「優勝できて嬉しいです。日本ダービー(G1)の時は掛かってしまったので、前半は良い位置取りで走っているなと思いました。ただ、このまま内で包まれないか心配しましたが、最後は本当によく伸びてくれましたね。G1の強いメンバー相手ですから、びっくりしました」

 一日の仕事を終えて、生産馬がもたらした勝利にスタッフは会心の笑みを浮かべた。「嬉しいのひと言です」、「北村宏司騎手の好騎乗」、「内心、勝てると思っていました」、「配合がうまくいったと思います」とその声は弾んでいた。菊花賞(G1)は1988年、生産馬ガクエンツービートが出走し、スーパークリークの2着に敗れたレースでもある。スタッフの中には当時から携わるベテランも含まれ、27年前の記憶もよぎる一戦でもあった。

 本馬は父ブラックタイド、母シュガーハート、母の父サクラバクシンオーという血統。4代母にチリ産の名牝Tizna、甥に日経新春杯(G2)2着のアドマイヤフライトがいる。2012年に母の3番仔として誕生し、オーナーの(有)大野商事=歌手の北島三郎さんは、当歳時から本馬と対面していたという。前述のガクエンツービートの頃から勤めている岩倉千年さん(同牧場・中期育成担当)は、本馬の幼少期について、「利口で、手のかからない馬でしたね。当歳から夜間放牧をして、1歳春~秋も夜間をしました。皮膚が薄く、背が高く、脚の長い体型。筋肉がついてくれば、楽しみな馬になると思っていました。この世代の牡馬では、ベスト3に入りましたね」と、振り返る。弘子さんはその体型を、“ダンスインザダークっぽい感じ”と、同じ菊花賞馬の名を挙げて説明した。

 1歳秋までを同牧場で過ごし、長きにオーナー所有馬を手がけている日高軽種馬共同育成公社(新冠町)で、後期育成が施された。主に本馬の背にまたがっていたのが、育成スタッフ・草野大地さんだ。

 「大人しくて、乗りやすい馬でしたね。もともと体が大きく、トモに緩さがあったので、時間をかけて調教を進めました。高い素質を感じていましたが、古馬になってからのタイプだとイメージしていました。今夏の休養期間にも乗りましたが、まだまだ伸びしろのある馬だと思いますよ」

 恵まれた体を生かせるように、陣営はデビューを焦らずに成長を促した。後期育成ではダートコースで乗り込み、無理せずに丸一年かけた。調教が進んでくると、‘12年夏に完成した同育成場の坂路コースに入り、併走で週2回駆け上がった。遅咲きだと踏んでいただけに、年明けの新馬戦から白星発進したことは、育成スタッフを驚かせた。

 菊花賞(G1)の勝利ジョッキーインタビューでは、オーナーの北島三郎さんが「まつり」を熱唱し、大きな話題を呼んだ。オーナーにとっては初G1。レース史に残る名場面となった。口取りには競馬版の北島ファミリーが並んだ。

 「オーナーとは約50年のお付き合いです。いつか大きなところを獲りたいとおっしっていたので、結果を出せて嬉しいです」と、弘子さんは安堵の表情を見せる。 

 ヤナガワさんの馬は走る_馬産地ではその凄さが話題になっている。繁殖牝馬約30頭という規模で、現役G1馬はこれで3頭目を数える。祝福した牧場主や市場関係者は皆、脱帽の表情を浮かべていた。弘子さんはじんわりと喜びをかみしめていた。

 「こうして再びG1を勝つことができましたが、今までを振り返ると、苦労が絶えなかった。牧場をやっていくことは経費もかかりますからね。支えてくれた全てのオーナーに感謝しています。牧場では前々から繁殖に力を入れ続けてきました。優れた種牡馬を交配して、質の高い牝馬を重ねてきたことが、実を結んできたと思います」

 本馬の次走予定は暮れの大一番・有馬記念(G1)。国民的有名歌手であるオーナーの人気も追い風に、今年のグランプリを盛り上げる一頭だ。530kgの菊花賞馬は果たしてどこまで進化を遂げるだろうか。完成の域が楽しみでならない。