復活というのは、今年の春はクラシック候補と言われたトーセンスターダムに失礼かもしれない。今年から名称を変更したチャレンジC(G3)。単勝15.2倍、5番人気という思わぬ評価をあざ笑うかのように、トーセンスターダムは馬群から一気に抜けだし、きさらぎ賞(G3)以来の勝利をあげた。 

　育成先はノーザンファーム早来牧場の林厩舎。その林厩舎に今年の夏、トーセンスターダムは調整へと訪れていた。

　「ダービー(G1)ではアクシデントもあったので、そのダメージが心配でしたが、痛みだけでなく、目立った外傷も無かったのは幸いでした」とはノーザンファームの林宏樹厩舎長。2歳時に厩舎へと送り出した頃よりも一回り大きくなったトーセンスターダムに、林厩舎長は更なる成長を促していく。

　「こちらに戻ってくる前に池江(泰寿)先生と話し合った結果、牧場にいる期間は楽をさせず、強めのトレーニングを行うことになりました。かなりの運動量になったと思いますが、それでも動きなどには成長の跡が見られただけでなく、いい状態を保ったまま厩舎へと送り出すことができたと思います」(林厩舎長)

　期待をしながら迎えた秋初戦の神戸新聞杯(G2)、そしてクラシック最後の一冠となった菊花賞(G1)だが、トーセンスターダムは林厩舎長の期待に応えるような走りを見せることは無かった。

　「2歳時から感じていたトモの緩さがこの調整でも感じられたように、まだ競走馬として完成しきっていなかったのかもしれません。また菊花賞(G1)のレース内容からしても、距離は切れを生かせる中距離ぐらいの方が合っていたのでしょう」(林厩舎長)

　育成馬、そして調整を行っていた馬を責任を持って送り届けるべく、林厩舎長は自ら馬運車に乗り込んで厩舎へと向かうことが度々ある。先月も調整を行っていた馬を栗東へと送り届けた際に池江厩舎へと出向き、トーセンスターダムの姿を見て来ていた。

　「牧場にいた頃よりもトモが一回り大きくなっており、調教の動きも良くなっていたことに驚かされました。担当されていた厩務員の方からも『いい状態です』と聞かされていたので、チャレンジC(G3)でどんなレースを見せてくれるかが、本当に楽しみでした」(林厩舎長)

　そのチャレンジC(G3)は、まさにトーセンスターダムの強さが出たレースだった。1000m通過58秒8という落ち着いた流れを後方で待機すると、最後の直線では上がり3ハロン34秒6の末脚でフルーキーとの叩き合いを制しただけでなく、先に抜けだしたデウスウルトも交わし去る。このチャレンジC(G3)を含め、勝利してきた4戦はクビ差、あるいはアタマ差と僅差ではあるが、それでも勝利を収めるところに、トーセンスターダムの底知れぬ強さが感じられる。

　「クラシックで期待していたような成績を残せなかったのは残念でしたが、今回のレース内容、何よりも馬体の成長からしても、古馬になってからの活躍が楽しみになってきました。まだ強くなると思いますし、来年は古馬のG1戦線で主役を張れるような馬になってもらいたいです」(林厩舎長)

　冠名の下の「スターダム」の意味とは、スターとしての地位のこと。来年、押しも押されもしないJRAのスターとして羽ばたくであろうトーセンスターダムにとって、このチャレンジC(G3)の勝利は、まさにステップとなるレースとなりそうだ。