重賞ウィナーレポート

2013年10月10日 エーデルワイス賞(中央交流) Jpn3

2013年10月10日 門別競馬場 晴 稍重 ダ 1200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:フクノドリーム

プロフィール

生年月日
2011年03月30日 02歳
性別/毛色
牝/栗毛
戦績
国内:4戦3勝
総収得賞金
78,861,000円
ヨハネスブルグ(USA)
母 (母父)
キャニオンリリー  by  エルハーブ(USA)
馬主
福島 実
生産者
谷川牧場 (浦河)
調教師
杉浦 宏昭
騎手
横山 和生
  • フクノドリームの母キャニオンリリー(14歳)
    フクノドリームの母キャニオンリリー(14歳)
  • フクノドリームの半妹(牝、当歳、父ケイムホーム)
    フクノドリームの半妹(牝、当歳、父ケイムホーム)
  • 半妹は離乳を無事に終え、元気に育っている
    半妹は離乳を無事に終え、元気に育っている
  • 数々の名馬が巣立った谷川牧場の放牧地
    数々の名馬が巣立った谷川牧場の放牧地
  • 北海道浦河町にある谷川牧場の事務所
    北海道浦河町にある谷川牧場の事務所

 「グランダム・ジャパン2013」2歳シーズンの第2戦は、門別競馬場を舞台に行われるダートグレード競走「エーデルワイス賞(Jpn3)」。JRAも含め、2歳牝馬限定で行われるダート重賞は当レースだけである。今年もJRAから精鋭4頭が遠征し、それを地元馬12頭が迎え撃つ形となったが、2歳ダート女王の栄冠をつかみ獲ったのはJRAのフクノドリーム。スピードの違いで序盤からハナを奪い、楽々と押し切って鞍上の横山和生騎手ともども初の重賞タイトルを手にした。

 フクノドリームの生まれ故郷は、浦河町の谷川牧場。明治創業の歴史ある牧場で、古くはハイセイコーのライバルとして今も語り継がれるタケホープ、その姉のオークス馬タケフブキ、シンザン産駒のクラシックホース・ミナガワマンナなど昭和の名馬を多数生産。平成に入ってからも、ブライアンズタイム初年度産駒のオークス馬チョウカイキャロル、ダートG1(Jpn1)3勝馬サクセスブロッケンなど、コンスタントに活躍馬を送り出してきた。現役馬では、今年のレパードS(G3)を制した3歳馬インカンテーションが、次世代のダート王を狙っている。

 「レースは門別競馬場で応援していました。初めての遠征競馬となりましたが、状態はよく見えましたし、本来の力を発揮できれば上位争いできると期待してたんです。ただ、相手も揃っていましたからね。道中は他の人気馬の位置取りを気にしながら見ていたのですが、4コーナーを楽な手応えでまわってきたので、これは勝てると確信しました。馬主さんや厩舎の皆さんといっしょに口取りすることができて嬉しかったです。牧場スタッフはかなり自信を持っていたようで、みんな応援馬券を当てて喜んでいましたよ(笑)」と話してくれたのは、同牧場専務の谷川寿郎さん。レース当日は生産・育成スタッフが浦河から駆けつけ、勝利の瞬間を目に焼き付けた。口取りはウイナーズサークルからあふれるほどの大賑わいとなった。

 フクノドリームの母キャニオンリリーは、谷川牧場のオーナーブリーディングホースとして競走生活を送り、JRAのダート短中距離で3勝をマークした。その半兄には南関東クラシックの羽田盃(大井)を制したキャニオンロマン、JRAでオープンまで出世したエンビライナーなどがいる良血馬だ。引退後に生まれ故郷へ戻って繁殖牝馬となり、6番仔の配合相手として選ばれたのが、輸入されてきたばかりの大物種牡馬ヨハネスブルグだった。「優秀な血統ですし、必ず結果を出せると信じていました。キャニオンリリーは交配種牡馬の長所を引き出し、毎年しっかりした仔を出してくれる良いお母さんです。もともと気の強さがありましたが、最近では幾分穏やかになってきました」と殊勲の母を紹介。写真を撮る際にはサッとポーズをとり、その表情も重賞馬の母となったことで自信にあふれているように見えた。

 フクノドリームは、同牧場が試みている新しい生産・育成方法に基づいて幼少期を過ごし、たくましく育ったそうだ。「フクノドリームは、牡馬みたいな骨格をしている立派な馬でした。前の世代から使い始めた新しい放牧地で過ごし、気の悪いところも見せず、せり上場まで順調に育ちました」と振り返る。

 1歳時にHBAサマーセールへ上場されたフクノドリームは、JRAによって630万円(税込)で落札された。その後、JRA日高育成牧場に移動して育成が施され、2歳春のJRAブリーズアップセールに上場。公開調教ではラスト2ハロン13.9-11.8のラップを計測し、福島実氏が落札。美浦の杉浦宏昭厩舎への入厩が決まり、6月の函館開催で早々とデビューしている。9月には函館芝の2歳オープン・すずらん賞を圧勝し、続く2歳ダート女王決定戦・エーデルワイス賞(Jpn3)を制した類稀なスピードは、早い時期から世界各国の舞台で活躍した父ヨハネスブルグを彷彿とさせるものがある。「育成に当たったJRA日高育成牧場の方も、重賞馬になってくれたことを大変喜んでいました。これからも無事に走って欲しいですね。父の産駒は短距離馬だけではありませんし、大きな可能性を秘めた馬だと思います」と、谷川専務も大きな期待を寄せている。

 また今年、フクノドリームの半妹となる当歳牝馬(父ケイムホーム)が誕生しており、無事に離乳を終えて元気に育っているそうだ。「当歳は胸前に深みがあり、バランスのとれた馬です。父ケイムホームの良さが受け継がれていますね」と姉に続く活躍に期待する谷川専務。こちらは現在のところ、1歳時のせり上場が検討されている。

 「馬産地では牝馬が過小評価されている傾向があるので、その価値を底上げしていく目的の『グランダム・ジャパン』シリーズは素晴らしい試みだと思います。牝馬の番組が充実してくれば、購買意欲の向上にもつながりますからね。今後、シリーズがさらに注目を集め、牝馬にも適正な評価が与えられる時代がくることを夢見ています」と締めくくってくれた。名門牧場が送り出した世界的な大物種牡馬の本邦初年度産駒。今後のさらなる活躍に注目していこう。