重賞ウィナーレポート

2013年03月18日 若草賞(GDJ)

2013年03月18日 福山競馬場 曇 不良 ダ 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ウォータープライド

プロフィール

生年月日
2010年03月04日 03歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:10戦6勝
総収得賞金
20,068,000円
マイネルラヴ(USA)
母 (母父)
キョウワセイラン  by  タイキシャトル(USA)
馬主
山岡 良一
生産者
辻 和明 (新冠)
調教師
塚田 隆男
騎手
兒島 真二
  • ウォータープライドの生産者の辻和明さん(右)と育成を担当した大作ステーブルの星名正博さん(左)
    ウォータープライドの生産者の辻和明さん(右)と育成を担当した大作ステーブルの星名正博さん(左)
  • 辻和明牧場ですくすくと育つウォータープライドの妹(牝1歳、父パーソナルラッシュ)
    辻和明牧場ですくすくと育つウォータープライドの妹(牝1歳、父パーソナルラッシュ)
  • キングスゾーンも生まれ育った辻和明牧場の放牧地
    キングスゾーンも生まれ育った辻和明牧場の放牧地
  • 辻和明牧場の看板
    辻和明牧場の看板

 キョウワホウセキという牝馬をご記憶だろうか?

 1992年の桜花賞(G1)でニシノフラワーが3馬身半差の圧勝を見せた当日の阪神競馬場7レース。残念桜花賞とも言われる「忘れな草賞」を同じく3馬身半差で快勝し、続くオークストライアルの「サンスポ4歳牝馬特別(G2)(現フローラステークス(G2))」にも優勝。本番の「オークス(G1)」はアドラーブル、サンエイサンキューに次ぐ3着で、古馬となってからも牡馬を相手に「東京新聞杯(G3)」を制するなど、マイルから中距離の重賞で活躍したシンボリルドルフ産駒だ。

 今年の『グランダム・ジャパン』3歳シーズン開幕戦「若草賞(福山)」を制したウォータープライドは、そのキョウワホウセキの孫に当たる。

 「かつて岡部幸雄さんがシンボリルドルフについて、“頭が良くて、恐ろしい気迫がある”と言っていましてね。その強さが繁殖牝馬にも宿るだろうと確信していました。なかなか機会がなかったのですが、いつかシンボリルドルフの血統を手がけてみたかったんです」と話すのは、ウォータープライドの生産者・辻和明さん。同じ新冠町の協和牧場で繋養されていたキョウワホウセキの仔キョウワセイラン(父タイキシャトル)に惚れ込み、足しげく通って購入するに至ったそうだ。

 協和牧場ですでに2頭を出産していたキョウワセイランは、辻さんの牧場にやってきてからもマヤノトップガン、チーフベアハート、バゴの仔を毎年順調に出産。そして、マイネルラヴとの交配で6番仔として生まれてきたのがウォータープライドだった。

 「母に似て利口でしたね。その一方で、気の強い面も見せていました。小柄でしたけど、闘争心を秘めた馬でした」と、生まれた当時のウォータープライドを振り返る。その後、1歳時にHBAサマーセールへ上場されたが、残念ながら主取り。当時、コンサイナーを担当した新冠町の育成牧場・大作ステーブルがそのまま引き受け、山岡良一オーナーとの縁につながった。「面倒を見てくださった大作ステーブルの皆さんには、本当に感謝しています。小さいながらも、丈夫な馬に育ちましたね」と辻さんは話す。

 辻和明牧場は家族経営の小さな牧場で、古くは水田農家を営んでいた。1976年の阪神3歳ステークスで2着し、菊花賞にも出走したオープンファバーという馬を生産したが、以降、目立った活躍馬に恵まれない期間が長く続いた。しかし、2005年に中央デビューしたキングスゾーンが名古屋競馬に移籍して大活躍。2007年にはダートグレードの「サマーチャンピオン(Jpn3)(佐賀)」に優勝し、その後も全国の競馬場を飛び回って重賞を沸かし続け、11歳となった今年も元気な走りを競馬場で披露している。

 その同じ名古屋競馬から、今度は牝馬の活躍馬ウォータープライドが誕生。2歳時の未来優駿「ゴールドウィング賞(名古屋)」に優勝し、『グランダム・ジャパン2012』2歳シーズンの「プリンセス特別(笠松)」でも3着と健闘。そして初遠征となった今回の『グランダム・ジャパン』3歳シーズン初戦の「若草賞」を見事に制したのだ。

 「1番人気に推されていましたし、期待して見ていました。直線で抜け出してから、ムチが何発入るか数えていましたよ。よく勝ってくれましたね」と愛馬の頑張りを讃える辻さん。「ここまで堅実に出走できている背景は、育成時代の成果があると思います。また、中距離への適応や叩き合いでの強さは、母系に宿るシンボリルドルフの血でしょう。次走も楽しみにしています」と期待を膨らませる。

 辻和明牧場では、ウォータープライドの妹に当たる牝馬が2頭続けて生まれている。辻さんが思いを懸けたシンボリルドルフの血が、『グランダム・ジャパン』を舞台に大きな花を咲かせ、競馬界の未来に枝葉を広げていこうとしている。