重賞ウィナーレポート

2005年04月30日 青葉賞 G2

2005年04月30日 東京競馬場 晴 良 芝 2400m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ダンツキッチョウ

プロフィール

生年月日
2002年02月25日 03歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:5戦3勝
総収得賞金
95,446,000円
サンデーサイレンス(USA)
母 (母父)
レイホーソロン  by  パーソロン(IRE)
馬主
山元 哲二
生産者
様似渡辺牧場 (様似)
調教師
山内 研二
騎手
藤田 伸二
  • 活躍した半姉サマニベッピン
    活躍した半姉サマニベッピン
  • サマニベッピン
    サマニベッピン
  • サマニベッピンと当歳(父ブライアンズタイム)~左が加納場長
    サマニベッピンと当歳(父ブライアンズタイム)~左が加納場長
  • 渡辺牧場の入り口
    渡辺牧場の入り口
 本格的な春の日差しを浴びる日高は暖かく、放牧される馬たちも心地良さそうに伸び始めた青草を食べている。しかし、今年の日高は春の訪れが少し遅く、この時期には膨らむサクラの蕾もまだ固そうだ。

 本馬のふるさとは様似町岡田の様似渡辺牧場。昨年始まった重賞ウィナーの取材では、この地域は初めてとなるが、牧場は、様似町市街地より様似川沿いに進み10分とかからない所に位置しており、えりも岬にも近く日高山脈の山並みが間近に迫る穏やかな河岸段丘の上に、整然と手入れの行き届いた同牧場が広がる。

 ダービー出走権を得た本馬の殊勲に同牧場の喜びも大きく、笑顔を見せる渡辺直子社長は「嬉しいですね。しばらくこの地域で重賞馬が出ていなかったので、この地域の勢いになったのが嬉しい」と共同意識の強い地元の生産者仲間も思いやる。渡辺社長は先代の父武司氏より引継いで同牧場を取り仕切るが、歯切れの良い言葉から手腕の高さが伺われる。現在10頭の繁殖牝馬を飼養するが「繁殖は増やしません。その分、良い種(種牡馬)を付け、良い馬を作ります」と語るように、この牧場では、毎年配合される種牡馬はサンデーサイレンス、ダンスインザダーク、ブライアンズタイムと言った総合サイヤーズランキングのトップクラスが選ばれる。渡辺社長の、この男勝りの度胸が多くの活躍馬を輩出しており、その代表格がサンエイソロン(‘81年日本ダービー2着 NHK杯他)や本馬の半姉・サマニベッピン(‘95年阪神牝馬特別他 現在同牧場繁殖馬)となる。

 本馬の母はレイホーソロン(母の父パーソロン、‘86チューリップ賞)、祖母がヤマトシャルダン(祖母の父セダン)で同牧場の大事な血統を引き継いでいる。15年連続で産駒を持つ大変仔出しの良い母親だ。本馬はその第15仔になるが、姉妹に前述、第3仔の半姉サマニベッピン(父ノーザンテースト)がいる。すでに牧場には、ほかに全姉のユキダルマとドサンコサンデーなどが繁殖入りしており、血統後継馬たちの産駒にこれからの期待がかかる。

 本馬の快挙にはスタッフの喜びも大きいが、同牧場に来て、間もなく本馬の出産から世話をしてきた加納場長も喜色満面だ。場長によると本馬は、母親のおとなしく温厚な性格に似ず、父親譲りのやんちゃさで、同世代の仲間に脚を掛けたりして悪戯をしていたようだ。加納場長は「母親と居た時もパドックの柵の下から抜け出たり驚かされました。でも、人の言うことは聞くし、素直でした。体はズングリとしていましたが、期待をしていましたよ」と懐かしむ。

 この加納場長の経歴が面白い。以前は国家公務員で千葉、札幌などの税務署に勤めたが、夢を諦めきれずに退職。オーストラリアの競馬学校を経て、日高の生産牧場で修行し4年前に同牧場に勤めたという。「最初に任された本馬がダービーに出走するのですから恵まれていますね。この牧場に来て本当に良かったです」(加納場長)と微笑む。

 出産・種付けに忙しい仕事の中で「競馬は夢ですから」と語る渡辺社長と共に、本馬の活躍がまた大きな夢を膨らましている。ダービートライアル、第12回青葉賞(GII)は、藤田伸二騎乗で1番人気のダンツキッチョウ(父サンデーサイレンス)が好位追走から直線で早めに先頭に立つと、後続の猛追をクビ差しのいで優勝した。通算成績5戦3勝。すみれSに続く連勝で初重賞勝ちを飾るとともに、ダービーの出走権を手に入れた。