重賞ウィナーレポート

2019年11月12日 金沢シンデレラC(中央認定)(GDJ)

2019年11月12日 金沢競馬場 晴 稍重 ダ 1500m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ミステリーベルン

プロフィール

生年月日
2017年04月23日 02歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:10戦4勝
総収得賞金
11,820,000円
ニホンピロアワーズ
母 (母父)
ミステリューズ  by  ナリタトップロード
馬主
四本 昭弘
生産者
市川牧場 (荻伏)
調教師
小国 博行
騎手
宮崎 光行
  • ミステリーベルンの母ミステリューズ(13歳)と生産者の市川孝司さん
    ミステリーベルンの母ミステリューズ(13歳)と生産者の市川孝司さん
  • ミステリューズはナリタトップロード産駒
    ミステリューズはナリタトップロード産駒
  • ブラストワンピースのいとこに当たるクレインテオドーラの2019(牝当歳、父トビーズコーナー)
    ブラストワンピースのいとこに当たるクレインテオドーラの2019(牝当歳、父トビーズコーナー)
  • 市川牧場の放牧地
    市川牧場の放牧地
  • 市川牧場の看板
    市川牧場の看板

 『グランダム・ジャパン(GDJ)2019』2歳シーズンの第4戦「金沢シンデレラカップ(金沢)」は、北海道からの遠征馬ミステリーベルンが差し切り勝ち。4番手追走から外をまわって追い上げ、直線で先に抜け出した佐賀からの遠征馬ミスカゴシマを捕らえて1馬身差の勝利。9月のフローラルカップ(門別)につづく重賞2勝目を、GDJの舞台で飾った。

 ミステリーベルンの生まれ故郷は、浦河町姉茶の市川牧場。1955年創業と長い歴史を持ち、古くは1971年の皐月賞で2着したバンライや、1987年の京阪杯(G3)に勝ったマルカセイコウなどを生産。地方競馬にも、2001年の黒潮盃(大井)、戸塚記念(川崎)を連勝し、東京湾カップ(船橋)も制したアブクマドリームや、2018年のGDJ2歳シーズン・園田プリンセスカップ(園田)で2着したピュアドリーマーなどの活躍馬を送り出してきた。そして近年の競馬ファンには、2018年の有馬記念(G1)を制したブラストワンピースの母ツルマルワンピースが生まれた牧場と紹介した方がピンとくるのかもしれない。

 「ツルマルワンピースの半妹クレインテオドーラ(父タニノギムレット)がうちの牧場に繁殖牝馬としていて、今年も父トビーズコーナーの牝馬を産んでいるんですよ。ブラストワンピースのいとこに当たる話題の血統馬です。あとで見て行ってください」と言って笑顔を見せるのは、市川牧場の3代目・市川孝司さん。現在はお1人で、4頭の繁殖牝馬とその仔たちを管理している。

 「ミステリーベルンの母ミステリューズは知り合いのオーナーから譲っていただいた馬なのですが、本当は今年、別の繁殖牝馬と入れ替える予定だったんです。そしたら新たに導入するはずだった馬が死亡してしまい、どうしようかと考えているうちにミステリーベルンが活躍し始めて、入れ替えをせずに置いておくことにしたんですよ。ミステリューズは、ここにいたかったのかもしれませんね」と母馬を紹介してくれた。その父ナリタトップロードはわずか3世代しか産駒を残しておらず、もしかすると貴重な血を残すために競馬の神様がそう仕向けたのかもしれない。

 「ミステリーベルンは生まれた時から線が細くて性格もおとなしく、特に強調するところのない馬でした。その馬がこうやって重賞を勝つのですから、わからないものですね。競走馬の生産は、何年やっても難しいです」と苦笑いを浮かべる。

 ミステリーベルンは、ニホンピロアワーズの初年度産駒。2012年のジャパンカップダート(G1)をはじめ、ダート重賞7勝を挙げて2016年に種牡馬入りしたニホンピロアワーズだが、ダート種牡馬激戦区時代の煽りを受けて初年度の種付数はわずか17頭。うち12頭が血統登録され、2019年12月15日時点でデビューした産駒は5頭。その少ない産駒の中から、2歳重賞を2勝する逸材が誕生したことになる。「ニホンピロアワーズは、ジャパンカップダート(G1)でホッコータルマエ、エスポワールシチー、トランセンドなどの錚々たるチャンピオンホースを破った馬ですからね。初年度だったのでどんな産駒がでるか未知数でしたが、期待もありました」と当時の記憶をたどってくれた。

 1歳の夏まで市川牧場の放牧地で健やかに育ったミステリーベルンは、2018年のサマーセールに上場。「全然声がかかる雰囲気がなかったので、知り合いの馬主さんにお願いして落札していただきました。希望額には届きませんでしたが、とりあえず競走馬への第一歩を踏み出すことができてホッとしました」とせり当日のことを振り返る。

 その後、浦河の育成牧場を経てホッカイドウ競馬の小国博行厩舎へ入厩。4月にデビューして2戦目で勝ち上がったものの、2勝目にはなかなか手が届かずにいた。「デビューからずっと1200m戦を使われていたのですが、9月に初めて1600m戦を走って5馬身差圧勝してから馬が変わったような印象がありますね。距離があるほうが、ミステリーベルンには合っているように感じます」と市川さんが話すように、つづく1600mの牝馬重賞・フローラルカップを1番人気に応えて優勝。そして初遠征となった金沢の1500m戦で、全国各地から集まった牝馬たちを一蹴することになったのだ。

 「オーナーも現地に行かれて、とても喜ばれていたようです。オーナーにとっても、調教師、育成者にとってもこの馬が初めての重賞馬ですから、ミステリーベルンは何か特別な運を持っている馬なのかもしれません。牧場にいた頃はいたって普通の馬だったミステリーベルンがここまで活躍できるようになったのは、関わってきてくれた皆さんの力だと思います」と関係者に感謝の意を述べ、「あと偶然かもしれませんが、JBCスプリント(Jpn1)を鮫川さんの生産馬ブルドッグボス、JBCレディスクラシック(Jpn1)を廣田さんの生産馬ヤマニンアンプリメが制するなど、ここ荻伏地区生産馬の活躍が最近目立つんですよ。良い流れが来ているのかもしれませんね(笑)」と嬉しそうに話してくれた。

 「この後は暮れの東京2歳優駿牝馬に出走し、来年は浦和の桜花賞を目指したいと聞いています。1人なのでなかなか牧場を空けるわけにはいきませんが、南関東クラシックに出られるようならぜひ現地で応援したいですね」と目を輝かせる市川さん。「長くつづけていると、こうして良いこともあるんですね。ミステリーベルンからは、いろんなことを教わりました」と言って、次の活躍馬の誕生を夢見ていた。