馬産地コラム

ヴァーミリアンを訪ねて~ブリーダーズ・スタリオン・ステーション

  • 2015年03月05日
  • ヴァーミリアン
    ヴァーミリアン
  • 放牧地ではマイペースに過ごしている
    放牧地ではマイペースに過ごしている
  • 気性の荒さはなく、手のかからないタイプ
    気性の荒さはなく、手のかからないタイプ
  • 人気種牡馬で、今年はすでに満口となっている
    人気種牡馬で、今年はすでに満口となっている

 日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬生活を送るヴァーミリアン(ノーザンファーム生産)を訪ねた。

 今年2月、放牧地へ足を運ぶと、13歳となるヴァーミリアンは静かに種付けに備えていた。毛ヅヤが冴え、表情に余裕がある。昼の放牧が終わり、牧柵まで担当スタッフの松下敦典さんが来ると、素直に近寄ってきて手綱がつながれた。ダートG1馬らしく力強い歩様で厩舎まで歩く。厚みを増した漆黒の馬体が冬の白い背景に映えている。

 「体調は良く、シーズンに向けてしっかり充電できました。マイペースな馬で、他の種牡馬を見ても我関せずといった様子です。普段は大人しいのですが、手入れの時は軽く噛んでみるとか、いたずら好きな面もあります。」と、紹介してくれた松下さん。同スタリオンに移動し一年以上が経過し、環境の変化にはすっかり順応したという。昨年は185頭と交配し、繁忙期は1日4頭をタフにこなした。

 「種付けに関してもやる気があって、前向きな馬ですね。手のかからないタイプです。」

 現場での呼び名は「ヴァー」。夏秋の見学公開時には出資していた一口クラブ会員の方や、ドバイまで応援に駆けつけた方を含め、多くのファンが会いに訪れた。

 現役時代は中央・地方・海外で2歳~8歳まで走り、通算成績は34戦15勝。2・3歳時は芝を中心に走り、出世レース・ラジオたんぱ杯2歳S(G3)を制してクラシックに駒を進めたが、同世代に怪物の強さを誇るディープインパクトがいたこともあり、見せ場を作れずに終わった。その後、3歳秋からダート路線に転ずると再び能力が開花し、トントンと重賞を奪取。特に5歳時は日本で負けなしの競馬を続け、中央・地方で大レースを席巻し、ダート界の一時代を築いた。6・7歳となっても衰えはなく、JBCクラシック(Jpn1)3連覇の快挙を達成し、8歳時も川崎記念(Jpn1)で自身3度目のレコードVを決め、総収得賞金は11億円に達した。

 2011年から種牡馬入りし、その競走成績もさることながら、貴重なエルコンドルパサーの後継種牡馬であり、実績あるスカーレット一族出身として大きな期待を集めた。初年度産駒は昨年デビューし、地方競馬で重賞馬が2頭、中央ではノットフォーマルが年明けのフェアリーS(G3)を快勝し、桜花賞(G1)戦線へ名乗りを上げた。松下さんは、「ヴァーミリアン自身はダートでG1を勝ちましたが、芝でも重賞を勝っていますからね。芝でデビューする馬が多いことや、重賞馬が出たことは何ら不思議ありません。今のところ短距離~マイルで結果が出ていますが、血統背景からは距離をこなせる馬も出てくるでしょう。ノットフォーマルが出たように、サンデーサイレンスのクロスを狙ってくる生産者の方もいらっしゃいます。」と、産駒の動向を見ている。

 2歳世代も豊富に揃っており、今年は種付料をアップしたにも関わらず早々に満口となっている。種牡馬として踏ん張りどころの3、4年目も多数の交配を記録しており、この人気ぶりは胸を張れる。松下さんは、「まずは一つ一つ勝って成績を上げていきたいです。産駒は仕上がりが早く、父のように息長い活躍をしてくれると思います。芝でも、ダートでも大物を送り出していきたいですね。」と、意気込みを語る。

 種牡馬としてはこれからが円熟期。これからはスタリオンのエースの座を狙う一角となる。全国で魅せた横綱の走りをもう一度。更なる息子・娘たちの継承に目が離せない。