馬産地コラム

ブラックタイドを訪ねて~ブリーダーズ・スタリオン・ステーション

  • 2015年01月06日
  • ブラックタイド
    ブラックタイド
  • 年齢以上に心身若く、元気一杯
    年齢以上に心身若く、元気一杯
  • 2014年は122頭と交配
    2014年は122頭と交配
  • アフリートのいた放牧地で過ごしている
    アフリートのいた放牧地で過ごしている

   日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬生活を送るブラックタイド(ノーザンファーム生産)を訪ねた。

   冬本番を迎えつつある北海道。ある日の午前、撮影のためブラックタイドに会いに行くと、放牧地で涼しい顔をしてカメラマンに視線をくれた。サンデーサイレンス産駒らしい黒光りする姿で、草を食んだり、遠くの高速道路を眺めたり。隣りの放牧地にいるステイゴールドとはお互いそれほど気にする様子はなく、ともにリラックスしている。

   「体調面は特に問題なく、食欲十分です。とにかく元気な馬で、14歳には思えないほど心身若いですね。毛ヅヤも良く、種牡馬の中でも見栄えのする馬体です。種付けはこの父系らしく好んでいて、上手ですね。」と、紹介してくれたのは、同種馬場主任の坂本教文さん。昨年は122頭と種付けし、6年連続3ケタに上る交配数を記録した。

   「昨年はクラシックに向けてマイネルフロストが毎日杯(G3)を制し、シーズン後半にかけて反響がありました。マイネルフロストは母の父がグラスワンダーで、ここの繋養種牡馬同士の血統でもあり、一層嬉しかったですね。4月からは1日3、4回種付けをしましたが、繁忙期も順調にクリアできました。」と、昨春を振り返る。

   ブラックタイドはセレクトセール出身馬で、当歳時1億185万円で落札され、金子真人ホールディングス(株)所有馬としてデビューした。後の重賞馬スウィフトカレントを負かして初陣を飾ると、クラシックへ向けてステップレースを歩み、若駒S、スプリングS(G2)を快勝。迎えた皐月賞(G1)では一度土をつけたダイワメジャーに敗れ、2番人気を裏切ってしまった。その後屈腱炎のため長期休養を余儀なくされ、復帰後は芝中距離のG3、OP特別で上位争いを果たすも、残念ながら勝利ならず、7歳6月の目黒記念(Jpn2)を最後に引退した。

   復帰に向けて休養している間に稀代の名馬の階段を駆け上がったのが、全弟ディープインパクトだった。その尋常ではない強さはいつしか、同じ血を持つブラックタイドの種牡馬価値へとつながった。競走生活後半は敗戦が続いていたものの、種牡馬入り当初から高い人気を集めた。これまで3世代がデビューし、テイエムイナズマとタガノエスプレッソが2歳重賞を、前述のマイネルフロストが日本ダービー(G1)で3着に好走。ダートでも活躍馬がいて、フィールザスマートが昨年のジャパンダートダービー(Jpn1)で3着に入り、地方ではデイジーギャルらが重賞馬となっている。

   「仕上がりが早く、芝・ダート問わず結果を出しています。立派な馬体を受け継ぎ、市場向きという声をよくいただいています。総じてボリュームある産駒が生まれることや、ダート適性の高さは全弟ディープインパクトとの違いかもしれませんね。」と、坂本さんは分析している。

   着実に実績を上げ、次世代以降も豊富な産駒数を揃えるブラックタイド。マーケットブリーダーからの支持も厚く、成功への道を築きつつある。種付料もリーズナブルな設定で、生産者・馬主を救うような存在でもあるだろう。坂本さんは、「昨年秋のデイリー杯2歳S(G2)で産駒タガノエスプレッソが勝ち、3世代連続で重賞馬が誕生しました。今度は父が果たせなかったG1制覇を、産駒が叶えて欲しいですね。」と、青写真を描く。

   ブラックタイドのいる放牧地には屋根がついた小さなシェルターがある。これはダートのリーディングサイアーに輝いたアフリートが晩年使用していたもので、ブラックタイドもシェルターには慣れている様子だ。坂本さん曰く、その放牧地になった経緯は隣り合う馬の相性の関係もあったが、「タイドが将来、アフリートのような看板種牡馬となれるように」という願いも込められているという。並々ならぬ期待を背負って円熟期へ。全弟ディープインパクトや同じ厩舎のステイゴールドを脅かすシーンは、更に展開されていくのではないだろうか。