馬産地コラム

フレンチカクタスを訪ねて~服部牧場

  • 2014年10月16日
  • フレンチカクタス
    フレンチカクタス
  • 無事初子を出産し、母馬らしくなってきた
    無事初子を出産し、母馬らしくなってきた
  • 現在はマンタッタンカフェの仔を受胎中
    現在はマンタッタンカフェの仔を受胎中
  • 初仔は父マンハッタンカフェの牡馬
    初仔は父マンハッタンカフェの牡馬

 2011年のフィリーズレビュー(G2)の勝ち馬フレンチカクタス(服部牧場生産)を訪ねた。今年の春初仔を出産し、繁殖牝馬として第一歩を踏み出している。

 9月のある日、見晴らしの良い放牧地へ足を運ぶと、フレンチカクタス母仔が草を食んでいた。初めての子育ても慣れた様子で、仔馬も安心した様子で寄り添っている。「だいぶお母さんらしくなってきましたね。引退後、牧場に帰ってきてからも順調で、体調は安定しています。もともと体高があって大きい馬なので、一緒にいる繁殖牝馬と比べても遜色ありません。少し気の強い面があるので、そのあたりは注意しながら扱っています。」と、紹介してくれたのは、同牧場の服部健太郎さん。初仔は4月23日に生まれた父マンハッタンカフェの牡馬。青鹿毛の容姿はサンデー系らしい印象を受ける。夏からは昼夜放牧し、10月頃の離乳までを母仔で過ごしている。

 「当歳は初仔のわりに大きくて立派です。伸びのある馬体、柔らかい身のこなしをしています。母はスピードタイプでしたが、マンハッタンカフェとの配合なので、ある程度距離をこなせる仔になってくれると思います。」と、服部さん。すくすくと成長している姿に、母フレンチカクタスもどこか嬉しそうだ。

 フレンチカクタスは現役時代11戦3勝。2歳時はデビューから安定した走りを見せて500万クラスを突破し、3歳春からは重賞へ。クイーンカップ(G3)では後のヴィクトリアマイル(G1)を制するホエールキャプチャに0.3秒差敗れたが、続くフィリーズレビュー(G2)では直線で10頭を抜き去る鮮やかな決め脚で、颯爽と重賞タイトルを手にした。迎えた大一番・桜花賞(G1)では9着に敗れ、その後白星を得られなかったが、関東のクラシック候補として一躍全国に名を馳せた。

 第2の馬生にあたって、彼女には追い風が吹いている。父タイキシャトルがブルードメアサイアーとして、メキメキと実績を上げているのだ。今年、日本ダービー馬となったワンアンドオンリーをはじめ、短距離~マイルG1をいつ勝っても不思議ない牝馬ストレイトガール、地方重賞11勝のクラーベセクレタなど、孫世代の勢いが著しい。「タイキシャトルがブルードメアサイアーとしても結果を出していますから、フレンチカクタスも繁殖牝馬として楽しみですよ。」と、服部さんは声を弾ませる。自身の競走成績もさることながら、血統的な魅力要素もパンチが効いていきそうだ。

 傾斜のある放牧地で草を食むフレンチカクタスは、青空の下で優しい顔を見せている。お腹の中には再び、マンハッタンカフェの仔を宿しているという。現役時代はメンコをしていたが、素顔を見ると額に小さな星がある。初仔の額には大きな丸い星だ。初秋の風を受けながら、ともに涼しげな表情をしている。立派な競走馬になるべく、母の愛情はたっぷり注がれたことだろう。服部さんは、「母仔とも大きな期待を寄せています。2代で重賞制覇を叶えたいですね。」と、将来を見据えている。