馬産地コラム

タカラシャーディーを訪ねて~乗馬クラブアクシス

  • 2014年08月19日
  • ちら見しただけで近づいて来てくれない
    ちら見しただけで近づいて来てくれない
  • のんびりと外を眺める
    のんびりと外を眺める
  • ハイポーズ
    ハイポーズ
  • やっと近くに来てくれた
    やっと近くに来てくれた
  • 前髪は天パーです
    前髪は天パーです

   青森県十和田市にある乗馬クラブアクシスに、タカラシャーディーを訪ねた。

   この日の放牧時間はすでに終わり、馬房の中から外を眺めていたタカラシャーディー。我々が馬房の前に近づくと、チラリとこちらを見ただけで、何事もなかったかのように、またのんびりと外を眺めている。隣の馬房の馬たちは、こちらに顔を出して挨拶してくれるのに、タカラシャーディーには全く興味を示してもらえなかった。「ものすごく自分を持った馬なんですよ。自分を持ちすぎてて融通が利かないというか…。こちらの思い通りには動いてくれませんね。人間の都合はお構いなしの、かなりの頑固者です(笑)」と、スタッフの澤下祐生さん。

   タカラシャーディーは、子供からお年寄りまで、誰が触っても噛んだり怒ったりしないというが、それは“人間に興味がない”ことの裏返しなんだそう。午前中にスタッフが近づくと、放牧に連れて行ってもらえるからとすぐさま近寄って来るが、午後になるとほとんど寄ってこないのだ。人だけではなく、他の馬にも興味がないそうで、洗い場などでよく他の馬に喧嘩を売られるけれど、よっぽどのことがない限りは喧嘩を買うことはない。一日の流れにもタカラシャーディーなりの順番がしっかりと決まっていて、その順番を飛ばされたり、急かされたりすると、怒って機嫌が悪くなるという。人間の気持ちを理解していないのではなく、自分の意思を貫き通す頑固者なのだ。

   現役時代のタカラシャーディーは、門別競馬場でデビューし、地方馬として中央に挑戦した。その後、中央へ移籍して毎日杯(G3)(2003年)を快勝。日本ダービー(G1)(11着:優勝馬ネオユニヴァース)に出走するまでに成長した。門別・栗東・笠松・金沢と渡り歩いた経験が、マイペースなタカラシャーディーを生んだのかもしれない。

   我々がしつこくカメラを構えていると、「仕方ないな…」という感じでこちらを向いて、ポーズを取ってくれた。横を向くと、前髪がとても特徴的であることに気づく。少し天然パーマがかかっていて、フワフワとボリュームがあるのだ。「どんなに梳いても、真っ直ぐにならないんですよね」とは、澤下さん。意志を曲げない頑固一徹な性格と、フワフワした前髪のギャップが愛らしい。彼の瞳を覗き込むと、こちらの想いがすべて見透かされているのではないかと感じるほど、深く穏やかに澄んでいた。周りを気にせず、自分の世界でマイペースに生きる。それが今のタカラシャーディーだ。