馬産地コラム

サマーバードを訪ねて~JBBA静内種馬場

  • 2013年11月18日
  • サマーバード
    サマーバード
  • 顔の大きな流星が特徴
    顔の大きな流星が特徴
  • 放牧地では機敏な動きを見せる
    放牧地では機敏な動きを見せる
  • 好物はミントキャンディー
    好物はミントキャンディー

 2009年のベルモントS(G1)などG1・3勝をマークしたサマーバード(アメリカ産)を訪ねた。昨年11月、日本軽種馬協会・静内種馬場での供用が正式発表され、クリスマスの翌日、新ひだか町静内に到着した。最初の交配シーズンを無事終え、再びの長い冬を過ぎれば、本邦初年度産駒誕生の知らせが近づいてくる。

 「すっかりこちらの環境にも慣れて、元気いっぱいに過ごしています。放牧地ではよく動いている一頭ですね。まだ7歳ですから、馬はフレッシュです。最初のシーズンから多くの交配のお申し込みをいただき、127頭と交配しました。」と、近況を伝えてくれたのは、同種馬場の中西信吾場長。時折、好物のミントキャンディーを与えると、喜んで食べるという。均整のとれた馬体は相変わらずで、現役時代は青いメンコに隠れていた素顔には、大きな流星がある。種付けシーズンを終えて、エンパイアメーカー、ヨハネスブルグといった先輩種牡馬と近い放牧地で、自由なひと時を満喫している。

 現役時代はアメリカで競走生活を送り、3歳時に9戦4勝。タフなレースで知られるクラシック最終戦・ベルモントS(G1)制覇をはじめ、トラヴァーズS(G1)、ジョッキークラブゴールドC(G1)を射止め、2009年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬に輝いた。その後はアメリカのウインスターファームで種牡馬入りし、2シーズンで300頭近い交配牝馬を集めた。

 血統は父がバードストーン、母ホンコンスコール、母の父サマースコール。父系はアンブライドルド~グラインドストーン~バードストーン~サマーバードと代々クラシックホースが続き、祖母のホンコンジェイドはエクリプス賞最優秀短距離馬・ルビアノの半妹。甥にはアメリカで人気高騰の種牡馬タピット、4代母の兄弟には名種牡馬リローンチがいる。 対面すると、写真の印象以上に魅力が迫ってくる。競走成績、血統の素晴らしさもさることながら、その馬体もしかり。実際、今年2月の種牡馬展示会では、多くの生産者の心を動かした。「実馬を見て、申し込みを決めた方も多かったようです。他の種牡馬と比較しても、馬体の雄大さは際立っていますからね。種牡馬展示会後は反響がありました。」と、中西場長は振り返る。さすがアメリカ・ダートG1馬という立派な容姿と、それでいて素軽さのある脚捌きは日本への馬場適性を浮かび上がらせる。

 日本軽種馬協会のホームページには、同馬の平成25年度・配合決定牝馬の一覧があり、そこには自身が重賞馬であったり、重賞馬の母であったり、ブラックタイプの濃い面々が列記されている。激しい競争が続く種牡馬界にあって、視界良好の船出であると言って差し支えないだろう。中西場長は、「11月からは来季に向けて乗り運動をしていきます。海外で先に誕生している産駒を見てきましたが、本当に粒揃いのラインナップでした。結果が出るのはまだ先ですが、種牡馬としても大きな仕事をしてくれると思います。また、血統や馬体からは、日本の芝向きの産駒も十分狙えるでしょう。皆さまに喜んでもらえるような産駒ができると期待しています。」と、声を弾ませる。北海道の長い冬を越せば、馬産地各地で息子、娘が生まれる。父に似て派手な顔つきも多く含まれるかもしれない。本邦初年度産駒誕生後、改めてどんな評判が馬産地を飛び交うか、今から興味深い。