スズカマンボを訪ねて~アロースタッド
2005年の春の天皇賞馬スズカマンボ(グランド牧場生産)を訪ねた。新ひだか町静内のアロースタッドで種牡馬生活を始めて7年目。この春、ついに産駒がJRA重賞Vを果たし、馬産地では改めてその名が飛び交っている。
「体調は安定しており、順調に今シーズンの種付けをこなしています。3月に産駒メイショウマンボが重賞を勝ってくれたことで、反響がありましたね。」と、明るい近況を伝えてくれたのは、同スタッド主任を務める本間一幸さん。春は早朝に放牧し、1日数回の種付けに応じていく日々。やや神経質な面があり、放牧時はどの種牡馬よりも先に厩舎から連れ出しているという。
「少し気性のキツい部分はありますね。種付けでは、競走馬時代に故障した左後肢に注意しながら取り組んでいます。仕事はしっかりやり遂げますし、数も十分こなせるタイプですね。」と、本間さんは特徴を語る。
現役時代は19戦4勝。歴代屈指の世代とされる2001年生まれで、キングカメハメハ、コスモバルク、ダイワメジャー、デルタブルース、ハーツクライらとクラシックを争った。3冠では脇役に甘んじたものの、3歳秋の朝日チャレンジC(G3)制覇を弾みとしながら、古馬となって天皇賞(春)(G1)へ出走。アイポッパー、ザッツザプレンティ、ヒシミラクル、リンカーン、海外からの刺客マカイビーディーヴァらを相手に、中団待機策から直線でグイグイ伸びた。13番人気の低評価をあざ笑うかのように突き抜け、小雨降る京都競馬場の観衆を沸かせた。芝3200mのG1馬とあって、スタミナの豊富さは間違いないだろうが、2歳時には芝1800mの萩Sをレコード勝ちしており、その距離適性は幅広いものだった。
産駒は3世代がデビューし、芝ダート問わず活躍馬を出している。芝では桜花賞(G1)に駒を進めたメイショウマンボ。ダートではグランダム・ジャパン2011・3歳シーズン女王マンボビーン、ホッカイドウ競馬2歳重賞馬で、JRA・OP入り間近のイッシンドウタイらが挙がる。
「産駒成績を見ていますと、得意馬場・距離に偏りはないようですね。総合力の高さが遺伝しているのでしょう。2歳戦から結果が出ていますし、総じて丈夫な印象です。父自身は古馬となってG1を勝ちましたし、成長力を見込める産駒も期待できると思います。」と、本間さんは分析。父を超す息子、娘の誕生を目指している。
撮影のため、厩舎から近い放牧地でスズカマンボと対面する。精悍な顔つき、まだまだ寒さの抜けない北海道ながら、馬体のハリは良い。発達した筋肉を躍動させて、威風堂々と歩いている。重賞馬の父となり、全体に貫録を増してきた印象だ。
「着実に種牡馬実績は上がってきていますし、この調子でG1を狙える馬、クラシックに駒を進める馬を出していける馬だと思います。同世代の優れた種牡馬たちに一矢報いたいです。」と、本間さんはふんどしを締めてかかる。今年は昨年以上の交配頭数を集められそうで、先々の産駒にも楽しみは広がる。現役時代の走りのように、加速がついたこの馬の怖さを思い知る日も近いだろう。