馬産地コラム

ダンスインザダークを訪ねて~ブリーダーズ・スタリオン・ステーション

  • 2012年11月28日
  • ダンスインザダーク
    ダンスインザダーク
  • 移動して一年が経過
    移動して一年が経過
  • スラッとした四肢
    スラッとした四肢
  • プライドが高く、賢い馬
    プライドが高く、賢い馬

 1996年の菊花賞(G1)を制し、JRA賞最優秀4歳牡馬に輝いたダンスインザダーク(社台ファーム生産)を訪ねた。今年11月、産駒がJRA通算1,000勝の大台に到達。サンデーサイレンス亡き後の、内国産種牡馬時代を牽引している一頭だ。

 繋養先は日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーション。奇しくも、かつてのライバル・フサイチコンコルドと入れ替わるように、昨年秋に移動してきた。「元気一杯ですね。若い頃はやんちゃだったようですが、種牡馬としてのキャリアは十分ですし、威風堂々としています。頭の良い馬で、人をよく見ていますね。コミュニケーションをとりながらも、観察されているような感じです。」とは、スタリオン主任の坂本教文さん。すっかり環境にも慣れ、シーズンオフの今はリラックスした時間を過ごしている。ここでの呼び名もやはり「ダンス」。見学公開では遠方からファンが訪れ、特に男性ファンが多いという。

 今季は種付け開始がやや遅れた分、45頭の交配頭数にとどまったが、来季は増加するだろう。坂本さんいわく、「プライドの高い馬で、種付けは毎回気持ちを尊重しながら導いています。以前は毎年のように200頭以上交配した馬ですし、頭数は余裕を持ってこなせますね。」放牧地で見ると、体つきはすっきりしていて、しなやかな動き。漆黒の馬体に後肢二白が上品さを醸す。スラッとした下半身はダンスの産駒に忠実に再現される。

 現役産駒はダークシャドウが古馬王道路線で、クラレントがマイル路線でG1候補に目されている。父同様、産駒の多くは芝向きで、2400m前後を得意とする馬が目立つが、ジョリーダンス、ダノンヨーヨー、マルカフェニックスのようなスピード能力に長けた産駒もいる。「菊花賞馬」、「母の父ニジンスキー」_重厚なイメージを抱かせる一方で、産駒の1200m、1400m、1600mでの快走、そのギャップも生産者を惹きつけているのかもしれない。母の父としても優秀で、現役では今年の重賞ホルダー・ザラストロ、メイショウカンパクらが挙がる。最近では、ダンスの肌馬を持ちたい、そうしたニーズも坂本さんの耳に届いているという。

 「来年20歳となりますが、心身ともに若く、今後もバリバリの現役種牡馬として活躍できると思います。アフリートやブライアンズタイムのように、長く一流馬を出していきたいですね。」と、坂本さんは意気込む。ザッツザプレンティ、デルタブルース、スリーロールスに続く、4頭目の菊花賞馬という、この馬ならではの挑戦も興味深い。運や速さではなく、菊花賞は最も強い馬が勝つ。正真正銘のポテンシャルを信じて、ロングセラーはなおも続く。