馬産地コラム

マーベラスサンデーを訪ねて~大西ステイブル

  • 2012年10月10日
  • マーベラスサンデー
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 優駿スタリオンステーションで種牡馬生活を送っていたマーベラスサンデーが2012年シーズンをもって種牡馬生活を引退。15年間の種牡馬生活にピリオドを打った。すでに優駿スタリオンステーションを退厩し、日高町の大西ステイブルに移動している。今後は功労馬としてけい養されるという。

 国道235号線から北海道道208号比宇厚賀停車場線にハンドルを切ると、平成15年にこの周辺を襲った台風10号を思い出す。もう9年も経つのに、まだ所々にその爪痕が確認できる。かつて、この地区を賑わせたスタリオンステーションがあった位置に20歳になったマーベラスサンデーがいた。

 見慣れた栃栗毛の馬体は、20歳という年齢と現役種牡馬を退いたという背景からちょっとだけスリムになったような気もするが、ある意味でそれは健康だ。

 「オーナーの希望で種牡馬生活を引退することになったようです。縁あってお預かりすることになったのですから、大切にしたい」と同ステイブルの大西社長。移動してまだ時間が経っていないものの「落ち着いていますし、食欲もあります。新しい環境にも慣れてくれたようです」と目を細めている。かつては「慣れない人を近づけさせない」というような気の強さがあったようで、今もその片鱗を垣間見せるが、新しい担当スタッフにも慣れて穏やかに日々を過ごしている。

 同馬は、父サンデーサイレンス、母モミジダンサー(母の父ヴァイスリーガル)という血統。サンデーサイレンスの初年度産駒の1頭として、新冠町の早田牧場新冠支場で産声をあげた。現役時代は4度の骨折に泣きながらも15戦して10勝2着2回3着1回。どんな位置取りからも確実に伸びる末脚。堅実な反面、びっくりするような勝ち方をするわけでもないその成績は“優等生”ともいわれた。宝塚記念(G1)含む重賞6勝。1997年にはJRA最優秀4歳以上牡馬にも選出されているが、その一方で「もっと出来たんじゃないか」と、どこか物足りなさを感じさせる成績だった。それは種牡馬となってからも変わることなく、産駒は中央、地方併せて10年連続100勝超え。シルクフェイマスのように自身とよく似たタイプの産駒を送り出しながら、芝・ダート、距離の長短を問わずに幅広いカテゴリーで活躍馬を送り出してきた。この成績は胸を張れるレベルなのだが、残念なのは、自身を超えるような大物には今のところ恵まれていないということか。

 しかし、もうそんな勝手な評価や数字に踊らされる必要もない立場になった。

 今は、新しい環境に慣れ、ゆっくりと体を休めて欲しい。放牧地で気ままに振舞うマーベラスサンデーを見ながら、そう思った。