シーイズトウショウを訪ねて~トウショウ牧場
短距離重賞5勝、初代サマースプリントチャンピオンに輝いた快速牝馬シーイズトウショウを訪ねた。現在は故郷トウショウ牧場で繁殖生活を送っている。
「体調は非常に良いですよ。人に対しては従順な気性ですが、相変わらず馬同士では強いですね。今年はダイワメジャーを受胎しています。」と、近況を語ってくれたのは同牧場の志村吉男場長。
12歳となった今ではすっかりお腹を大きくし、母親としての貫録も感じられる。静内の山奥に構える同牧場は自然豊かで、牧柵の向こうにひょっこりシカの姿が見えることもしばしば。見学公開日には多くのファンの「シーイズ」と呼ぶ声に挨拶していた。
現役時代は主に芝短距離で活躍し、3、4、5、6歳と4年連続で重賞制覇を成し遂げたタフな牝馬。重賞制覇はすべて牡馬相手のもので、破った相手には一流のスピードを誇ったテイクオーバーターゲット、カルストンライトオを含む。G1でも2、3、4、5着が各1回あり、掲示板でとれなかったのは1着だけ。勝ち切れなかったことが悔やまれるが、毎レース堅実に走り切る彼女の真面目さ、ひたむきさはファンの心を打ったのではないか。ショウナンカンプ、カノヤザクラ、グランプリボス、ダッシャーゴーゴー、同じサクラバクシンオー産駒の出世馬は多数挙がるが、シーイズトウショウ以上に賞金を稼いだ産駒はまだ現れていない。
繁殖牝馬としてはこれまで3頭の仔を出産し、初仔のスサーナトウショウは未勝利戦で2、3着を記録しながら勝ち上がれず、昨年引退して里帰り。最初の交配相手として短距離芝G1馬キンシャサノキセキが選ばれている。2番仔には父フジキセキの1歳牝馬、3番仔には父ヨハネスブルグの当歳牡馬が誕生している。「1歳は大きすぎず小さすぎず、バランスのとれた体つきをしていますね。栗東の池添兼雄厩舎に入ります。当歳は人なつこくて、こちらも順調に育っています。」(志村場長)
近年、輸入牝馬からのG1馬誕生が目立っているが、日本の名牝にも底力を発揮して欲しいと願うファンも多いだろう。伯母にシスタートウショウ、近親にウオッカがいる血統背景からも、大きな可能性を感じずにはいられない。「残念ながら初仔では勝てなかったので、まずは1勝することが目標になりますね。当歳、1歳とも素晴らしい馬ですし、楽しみにしています。」と、志村場長も期待を込めている。