ホワイトマズルを訪ねて~レックススタッド
数々の重賞馬を送り出しているベテラン種牡馬の一頭、ホワイトマズル(英国産)を訪ねた。昨年12月に長らく住まいとした社台スタリオンステーションより移動し、春からは新ひだか町静内のレックススタッドで種牡馬生活を送る。
「こちらに到着してからも体調はすこぶる良いですね。毛ヅヤが良くて、馬格があり、22歳には見えません。15、6歳の馬と接している感じです。日頃の扱いで手を焼くことはないですが、気持ちの強さはひしひしと感じます。それが勝負根性として産駒に受け継がれているのでしょう。」と、紹介してくれたのは同スタッドの泉山義春場長。骨太でガッチリした馬体は相変わらず。飼い葉もしっかり食べ、とても頑丈な馬だという。
年末年始になると馬産地では一斉に種牡馬のノミネーション情報が出回るようになるのだが、200頭に及ぶ現役種牡馬の一覧表で、ホワイトマズルのような20歳以上の種牡馬は1割にも満たない。いくら競走成績が良かろうと、血統が良かろうと、100頭以上の花嫁を集めようと、結果がすべての種牡馬競争にあって、4、5年で乗用馬となった種牡馬も数知れない。18年間、当たり前のようにそこに名を連ねている彼には静かな凄みを覚える。
現役時代は17戦6勝。3歳時にイタリアダービー(G1)を制し、Kジョージ六世&QエリザベスS(G1)ではオペラハウスの2着、凱旋門賞(G1)ではアーバンシーの2着に好走し、ジャパンカップ(G1)にも参戦した。4歳時にはドーヴィル大賞(G2)を優勝。秋には、ムーラン・ド・ロンシャン賞(G1)で日本人騎手として初の海外G1制覇を果たしたばかりの武豊騎手を背に、再び凱旋門賞(G1)に挑んだが、カーネギーの6着に敗れ、11月のBCターフ(G1)を最後に引退した。
産駒はこれまでに14世代、600頭以上がデビューし、3分の2以上が勝ち名乗りをあげている。主な産駒にはクラシックホースのアサクサキングス、スマイルトゥモロー、天皇賞馬イングランディーレ、シンガポール航空国際C(G1)で海外G1制覇を飾ったシャドウゲイトらがおり、芝中長距離戦での栄冠が目立つ。
また、ブルードメアサイアーとしても頭角を現しつつあるのが最近のホワイトマズルで、現3歳世代にも素質馬が登場している。先日のフェアリーS(G3)で初重賞制覇を果たしたトーセンベニザクラ(父ダイワメジャー)、昨年の朝日杯FS(G1)で上位人気に推されたダローネガ(父ダイワメジャー)、園田の2歳重賞を制したアスカリーブル(父ブラックタキシード)らがそうで、3頭の父名を見ればピンと来る通り、とりわけサンデー系種牡馬特有の軽さ・キレ味と、ホワイトマズルに宿る欧州仕込みの底力が絶妙なマッチを見せている。
新たな地でスタッドインを果たす今年は、改めて牧場関係者への興味を抱かせる機会となる。地元新ひだか町はもちろん、これまでの拠点からは遠かった日高東部の牧場にとっても、より身近な馬として売り出していける。
「種牡馬としてはまだまだ現役バリバリですし、春から元気に種付けをこなしてくれるでしょう。今年も芝ダート問わず、産駒が活躍してくれることを願っています。」と、泉山場長は朗らかな表情で話す。2月の種牡馬展示会では、“高齢だから”とは言わせない頼もしい雄姿に、熱い視線が注がれるに違いない。