ジャングルポケットを訪ねて~社台スタリオンステーション
「この秋は、ジャングルポケットに対する取材がすごいんですよ」と社台スタリオンステーションの徳武英介さんが嬉しい悲鳴をあげている。それはそうだろう。秋華賞(G1)ではアヴェンチュラが春の既成勢力を一蹴。エリザベス女王杯(G1)でも世界のスノーフェアリーを相手に両前脚を骨折しながら差しかえそうとした。トーセンジョーダンは天皇賞(秋)(G1)をレコードで快勝。さらにはアルゼンチン共和国杯(G2)でトップハンデを背負ったオウケンブルースリが2着するなど産駒の活躍は枚挙に暇がない。加えるならば、自身が得意とした東京競馬場と京都競馬場で良績が目立つという部分も物語にしやすいのかもしれない。ちなみに、アヴェンチュラの秋華賞(G1)優勝で、産駒は5年連続のG1勝利。この数字はグレード制制定以降、内国産種牡馬としては最長のものとなる。
そんなことを考えながらも、取材班の足も安平町の社台スタリオンステーションへとむかった。ジャングルポケットがいる放牧地は、以前と同じ事務所からほど近い場所。父トニービンゆずりの体型と歩様は13歳になった今も変わりがない。いつもと同じように少し頭を重そうにしながら、おいしそうに草を噛んでいる。「基本的にはマイペースな馬なんですよ。以前、シャトルから帰ってきても、あまり変化はなかったように、自分をしっかり持っている馬」と徳武さんがいうように、取材者の向けるカメラにもあまり関心を示さない。いつもと違うのは、少しばかりまわりが騒がしくなったことかもしれないが、それでも自分を見失わないのは年度代表馬の貫禄だろうか。
今回の訪問記を書くにあたって、あれからもう10年も経つのかと、改めて驚いた。2001年11月25日。この日、ジャングルポケットは連覇を目指したテイエムオペラオーをゴール前でクビ差交してゴールへと飛び込んだ。鞍上のO・ペリエ騎手が体全体で喜びを表現していたのも印象的だったが、それは世代交代を突きつけるとともに、シンボリルドルフもウイニングチケットもスペシャルウィークもなし得なかった内国産3歳馬によるジャパンC(G1)初優勝の瞬間でもあった。
しかし、ジャングルポケットが先頭でゴールを駆け抜けたのは、このレースが最後になった。海外遠征も期待された翌年は、脚部不安などにより不完全燃焼のまま引退。2003年から種牡馬となっている。
「コンスタントに大物を出す評価をいただいて、根強い人気があります。サンデーサイレンス系牝馬との間はもちろんですが、他系統の牝馬からも活躍馬が出ているのが心強いです。貴重なトニービンの後継種牡馬として、これからも変わらない活躍をして欲しいですね」と事務局。しっかりと自分自身を伝えることができるから、流されない。ブレない。変わらないことの大切さを、ジャングルポケットは教えてくれているような気がする。