カネヒキリを訪ねて~優駿スタリオンステーション
2005年、2008年の最優秀ダートホース・カネヒキリ(ノーザンファーム生産)を訪ねた。現在は新冠町の優駿スタリオンステーションで種牡馬生活を送っている。
朝7時、種牡馬仲間を眺めながら、ゆったりと草を食むカネヒキリがいた。スタッドインしている名だたるG1馬、良血馬を横目に、新入りの彼も負けないオーラだ。「夏の暑さに体調を崩すこともなく、元気に過ごしています。さすがダートG1馬だけあって、雄大で迫力のある馬体です。利口で頭が良く、サンデーサイレンス系の馬にしては気性の激しさもなくて、扱いやすいです。」と、話してくれたのは同スタリオンの山崎主任。同系種牡馬の競合が激しい中、ダートG1競走7勝の輝かしい実績に加え、リーズナブルな種付け料が後押しし、初年度から多数の交配牝馬を集めた。今年6月、網嚢孔ヘルニアのため手術を行ったが、現在は順調に回復し、来シーズンに向けて英気を養っている。
通算成績は23戦12勝。2度のジャパンカップダート(G1)制覇に加え、ジャパンダートダービー(G1)、ダービーグランプリ(G1)、川崎記念(Jpn1)、東京大賞典(Jpn1)など地方のビッグタイトルも総なめにし、ドバイワールドカップ(G1)では日本産馬の意地を見せた。12勝のうち9勝は1番人気に応えての結果で、真の強さをまざまざと見せつけるのがカネヒキリだ。接戦になればまず抜かせなかったし、競走生活半ばで見舞われた2度の故障も乗り越え、類まれな勝負強さと不屈の闘志がファンの心を打った。
初年度産駒の誕生は来年春。栗毛の牡が生まれたら、カネヒキリみたいにならないかな、と生産者は思うだろう。もちろん、どんな毛色でも、性別でも、無事に生まれてくるのが一番ではあるが。カネヒキリ譲りのたくましい馬体を受け継ぐ息子、娘が目に浮かぶ。
春の種牡馬展示会では彼目当てに来た生産者も多かったと聞く。ともに作る未来へ、山崎主任にも当然大きな期待が宿っている。「カネヒキリ同様、産駒も全国の競馬場で活躍して欲しいですね。こちらにいるマヤノトップガンやキングヘイローのように、リーディングで上位争いできる種牡馬を目指せると思います。」
カネヒキリの父フジキセキは芝G1馬も数多く送り出しており、芝の大物を出す可能性も十分ある。ここはひとつ、ダート王者のプライドと血の底力を存分に魅せて欲しい。馬産地が求む頼れる種牡馬にきっとなれるはずだ。