ユキノビジンを訪ねて~村田牧場
1993年のクイーンS(G3)を優勝したユキノビジン(牝21歳、父サクラユタカオー 母フアテイマ)を新冠町の村田牧場に訪ねた。
本馬は1992年8月、岩手競馬の阿部時雄厩舎からデビュー。スピードの違いで3連勝、岩手の重賞・南部駒賞では5着と敗れたものの、明け3歳となる1993年に中央競馬の久保田敏夫厩舎に転厩した。
移籍初戦となったクロッカスS(OP)では、人気薄ながら初芝を物ともせず3馬身差の完勝を見せた。地方(岩手競馬)出身という背景、父サクラユタカオーに似た美しい栗毛の馬体に白い馬装、可愛らしい馬名が相まって、一躍人気者となった本馬は桜花賞(G1)、オークス(G1)と続けてベガの2着に入り実力も見せつけた。
当時、3歳限定戦でエリザベス女王杯(G1)の前哨戦だったクイーンS(G3)で1番人気に応え、後のエリザベス女王杯(G1)優勝馬ホクトベガに完勝し重賞初制覇を果たした。
迎えた本番、エリザベス女王杯(G1)では実力を出し切れず10着に大敗したが、続くターコイズS(OP)ではトップハンデ56.5kgを背負いながら、ホクトベガに再度完勝した。残念ながら、脚部不安がつきまとい、翌1994年9月に登録を抹消した。競走成績10戦6勝(地方4戦3勝、中央6戦3勝)
1995年より繁殖入りした本馬は15年間で12頭(牡9頭、牝3頭)の産駒を送り出したが、2010年に繁殖を引退、現在は功労馬として村田牧場で余生を送っている。
「可愛くて美人で強い、現役時代は驚くほど女性人気の高い馬でしたね。馬体は若々しく受胎率も良いので、まだまだ繁殖を続けることも出来たのですが、爪が悪く、身重になると脚が痛くなったりと大変だったので繁殖を引退させる事にしました。今は早朝から夕方まで、上がり馬や空胎馬と一緒に放牧しています。脚元のケアをしながら余生を見守っていきたいですね」と語ってくれた村田牧場のスタッフ。
繁殖を引退した本馬だが、今年デビューするコアンドル(牝2歳、父リンカーン)がラストクロップとなる。ホッカイドウ競馬の林和弘厩舎からデビューを予定している。また、後継の繁殖牝馬としてハルジオン(牝3歳、父ティンバーカントリー)が牧場に帰って来ている。初年度の配合相手にはローレルゲレイロが選ばれた。来年誕生する産駒は、父、母、母の母が村田牧場生産という生産者としては夢の配合だ。
「岩手競馬出身の馬ですし、東北のファンにも応援して頂きましたから、ユキノビジン一族の活躍で『頑張れ東北!』というメッセージを届けたい気持ちもありますよ。ハルジオンには後継繁殖牝馬として、コアンドルには競走馬として、デカイ花火を上げて競馬を盛り上げて欲しいですね」と熱く語ってくれた。東北へのエールが届くことを願いたい。