馬産地コラム

スプリングドリューを訪ねて~辻牧場

  • 2011年05月13日
  • スプリングドリュー~1
    スプリングドリュー~1
  • スプリングドリュー~2
    スプリングドリュー~2
  • スプリングドリュー~3
    スプリングドリュー~3

 “ドリュー”という名前は、見るものを驚かせるのが好きらしい。

 天才子役であり、またお騒がせ女優として知られるドリュー・バリモアから名前の一部をもらったスプリングドリューは、まったくの人気薄ながら目の覚めるような追い込みで2007年の福島牝馬S(G3)を快勝した。磨き上げられた白い馬体が、まるでスポットライトがあたるヴィクトリーロードを進むが如くに先頭に踊り出るシーンは、さながらハリウッド映画のワンシーンのようでもあった。

 とはいえ、スプリングドリューは以前から追い込みを武器にしていたわけではない。下級条件時代はダート競馬で実績を積み重ねて、その後は先行力をいかして芝の中、長距離レースで活躍した。そして、準オープン特別では豪快に追い込み勝ちを決めた。福島牝馬S(G3)では多くの人を驚かせたが、デビュー前から「牝馬限定重賞くらいは勝てる」と本馬を評価していた厩舎関係者にとっては必然のものだったのかもしれない。いずれにしても、型にはまらない奔放さは天才女優を彷彿させるものとなった。

 「重賞を勝つような馬はさすがに違いますよね」と褒めるのは、現在スプリンドドリューをけい養する辻牧場の藤沢義幸場長だ。タフに48戦を戦い抜き、そして現役生活を引退すると休むことなく受胎、そして出産を繰り返している本馬に目を細めている。今年デビュー年度を迎えた2歳は、種牡馬アドマイヤムーンにとっても最初の仔。そして第2仔にはジャングルポケットの牝馬がいて、今年はフジキセキの牡馬を出産した。「4月29日、昭和天皇の誕生日でもあり、英国のロイヤルウェディング当日に生まれました。縁起が良さそうです」と牧場は明るい話題に包まれている。

 そんなスプリングドリューの母親ぶりについて「過保護というわけではないですが、仔ども面倒はしっかりと見てくれますね。優秀な母親です」と評価するが「実は、あまり体を触られるのが好きじゃないので手入れは嫌がります。白い馬ですから困っちゃいますね」と苦笑い。それでも、十分に手がかけられているのだろう。白い馬体は春の陽射しに優しく光っている。

 「あまりじっとしているのが好きではない」という言葉どおりに放牧地を自由気ままに走り回っている。「放牧地では先頭で走ることが多いですね」と頼もしそうだ。

 ゴールデンウィークを過ぎると、梅と桃と桜がいっせいにそのつぼみを膨らませて馬産地北海道も遅い春を迎えることになる。春は、もうすぐそこだ。