スーパーホーネットを訪ねて~アロースタッド
新ひだか町のアロースタッドへ新種牡馬スーパーホーネット(ガーベラパークスタッド生産)を訪ねた。昨年、右前浅屈腱炎のため引退し、この春から種牡馬入りすることとなった。
アロースタッド副主任の松木優さんに近況を伺うと、「昨年11月30日に入厩しました。現在は脚元も問題なく、環境にも慣れて元気です。現役時代は手がかかったと聞きましたが、引退後の様子は大人しいです。」とのお返事だ。春は朝6時から午後1時半頃まで放牧している。ここでの呼び名は“スーパー”。馬体重は520kgあり、現役時に比べると50kgほど増えているが、まだ競走馬らしい体つきだ。放牧地では素軽い脚さばきで走り回っていた。
現役時代は31戦10勝。G1では4度2着があり、僅かに栄冠には届かなかったが、戦歴の中身は濃い。優勝した重賞、マイラーズカップ(G2)ではカンパニーを、毎日王冠(G2)では女王ウオッカを下し、アウェーの香港マイル(G1)では5着に好走した。G1馬であっても容易に種牡馬入りが叶わない時代ではあるが、彼の高いパフォーマンスを知る人ならば、是非とも血を残して欲しい一頭だと認めるはずだ。
スーパーホーネットの父はアメリカ産のロドリゴデトリアーノで、オークス馬エリモエクセルを送り出した。父の産駒は芝向きで、スーパーホーネット自身も芝で33秒、34秒台の末脚を繰り出し、エスカレートする高速決着を戦い抜いた。牡馬の代表産駒はスーパーホーネットで、後継種牡馬としての役割も背負う。2歳から7歳まで息長く一線級と戦った強靭さ、激戦のゴールラインで発揮した勝負根性、似たり寄ったりの少ない血統構成とリーズナブルな種付け料は魅力たっぷり。関心を寄せる生産者は多い。
2月に行われた種牡馬展示会では同スタッドのバトルプラン、ルースリンドと共に注目のニューフェイスとして登場し、多くの視線を集めた。さすが幾度とG1に出走した馬だけあって、大勢の人目にあっても全く動じず、キレのある馬体を披露した。当日は管理していた矢作調教師も現地に駆けつけ、愛馬のセールスポイントを直接伝えた。
松木さんは、「産駒も芝のマイルを中心に活躍してくれるのではないかと思います。展示会では堂々としていましたよ。矢作調教師にとっては厩舎を長らく支えた思い入れ深い一頭とのことで、種牡馬としての歩みも楽しみにされています。」と、語る。苦楽を共にしたホースマンとファンの希望を乗せ、果たせなかったG1制覇へ新たな一歩を踏み出す春だ。