馬産地コラム

デュークグランプリを訪ねて~静内フジカワ牧場

  • 2011年03月01日
  • デュークグランプリ~1
    デュークグランプリ~1
  • デュークグランプリ~2
    デュークグランプリ~2
  • デュークグランプリ~3
    デュークグランプリ~3
  • 毛ヅヤの良さが目立ちます
    毛ヅヤの良さが目立ちます

 1997年の武蔵野ステークス(G3)の覇者デュークグランプリ(静内フジカワ牧場生産)を訪ねた。現役時代はダート中長距離重賞を3勝。重戦車のごとく雄大な馬格をゆるがせ、パワフルな走りで他馬を圧倒した。引退後は5年間種牡馬生活を送り、現在は故郷の牧場で功労馬として余生を過ごしている。BTCの引退名馬飼養環境整備事業助成対象馬で、見学も可能だ。

 専用の放牧地へ行くと、一昨年会った時と変わらない様子のデュークグランプリがいた。老いは感じられない。同牧場の藤川靖仁さんに近況を伺うと、「体調面はいたって良好。健康そのものです。食欲旺盛で、20歳には見えないぐらい元気一杯ですよ。皮膚の良い馬で、馬服を着せなくても毛ヅヤが光っています。」と、明るい表情を見せる。現役時代からはややシェイプアップして、現在の馬体重は500kg前後。朝6時から午後3時まで放牧している。

 放牧地では雪をかきわけ、涼しい顔で草を食んでいる。藤川さんは、「悠悠自適の生活ですしね。年齢を重ねて穏やかになりました。」と、語る。一見、大人しそうに見えるが、競馬場では優れた勝負根性を発揮し、強敵をねじ伏せた。獲得した重賞タイトルのうち2つは、クビ差、アタマ差の接戦を制している。「内に秘めた気の強さも感じます。」幼駒時代から手がけた藤川さんは、付け加えた。

 負かした相手には後にドバイワールドカップ(G1)にも参戦したキョウトシチーや、エムアイブラン、メイショウアムール、ナリタホマレなど、全国各地でダート重賞を彩った強豪馬が並ぶ。出走した重賞6戦は全て3着以内をマークし、底を見せないまま競馬場を去った。G1レースで彼の姿が見られなかったのが何とも惜しい気持ちにさせる。

 今年で20歳の大台へと辿ったが、ガッチリした馬体は“おじいちゃん”のシルエットとは思えない。藤川さんは、「牧場の礎を作ってくれた馬だし、長生きさせてあげたいです。これからは歯も悪くなっていくかもしれないし、体調管理には十分気を付けていきたい。」と、優しく声をかける。

 牧場を支えてくれた彼へ感謝の気持ちを込めて、たっぷりと安らげる時間を与えていく一心だ。