馬産地コラム

ウイニングチケットを訪ねて~うらかわ優駿ビレッジAERU

  • 2011年01月06日
  • ウイニングチケット~1
    ウイニングチケット~1
  • ウイニングチケット~2
    ウイニングチケット~2
  • ウイニングチケット~3
    ウイニングチケット~3
  • ウイニングチケット~4
    ウイニングチケット~4

 浦河町優駿ビレッジ「AERU」は訪れる人があとを立たない観光スポットだ。ニッポーテイオー、ダイユウサク、ウイニングチケット、サニーブライアンが同じ放牧で過ごし、隣の放牧地では2010年から仲間入りを果たした同世代の2歳チャンピオン、エルウェーウインとヒシマサル、ケイティタイガーがのんびりと余生を過ごしている。

 豪華4頭のG1ウイナーがいる放牧地では比較的若いウイニングチケットが一番活発に動きまわっている。「ご覧のように体調は良いですよ。きれいな馬で、年齢を重ねても以前の体型を維持しています」と乗馬部門の島村博マネージャーが誇らしげに言う。確かに、毛ヅヤもよく、無駄肉のついていない体型は現役時代の面影を残している。

 のんびりとマイペースに過ごすダイユウサクをウイニングチケットが追いかける。それをニッポーテイオーがいさめる。一番若いはずのサニーブライアンはちょっと離れたところで無視を決め込んでいる。不思議な馬社会の一場面を見たような気がした。

 「まわりに馬がいないと寂しいみたいですね。だから、ほかの馬がいるところに自分から入っていくんです」。馬という動物は、放牧されている間は大半の時間を下を向いて過ごしている。少しでも美味しそうな草を求めて歩きまわる。微妙な味覚の違いがあるのだろうか、離れたり、近づいたり。ふと気付くとまわりに馬がいなくなったウイニングチケットは、ほかの馬の側に寄っていく。そんなウイニングチケットを見ていると、20歳という年齢を感じさせないほどにいとおしく思う。

 「特別な競馬ファンでなくても、この馬と、サニーブライアンを知っている人は多いですね。やっぱりダービー馬というのは特別な存在なのですね」と島村さん。ウイニングチケットの現役時代「ダービーを勝てたら、騎手を辞めてもよいというくらいの気持ちでレースに挑む」と言い放った柴田政人騎手(現調教師)の言葉はサークルを超え、そしてダービーというレースの重みを広く知らしめることになった。そんなこともあってか、トレッキング(外乗)で功労馬放牧地の側を通るとき、存在を知らなかった乗馬愛好者からも歓声があがるという。競馬や乗馬という枠を超え、また一般の観光客に愛されている幸せな馬だ。

 2005年に種牡馬を引退。すでにラストクロップもデビューを果たしており、後継種牡馬を残すことはできなかったが、母の父としてNHKマイルC(Jpn1)2着、ダービー(Jpn1)3着のブラックシェル、ローズS(G2)2着のシェルズレイを出し、明け3歳世代には期待のディープインパクト産駒のヴィジャイがいる。その血は永遠なのだ。