マツリダゴッホを訪ねて~レックススタッド
「虎は死んで皮を残し、人は死んで名を残す」数え切れないほどの活躍馬を送ったサンデーサイレンスは、その最後の世代にマツリダゴッホを残した。
恵まれない人生を送り、死後に評価が高まった狂気の天才画家からその名前の一部をもらった天才ランナーは、デビュー戦から鮮烈なパフォーマンスを発揮した。しかし、勝つときの鮮やかさとは裏腹に、負けるときの潔さもまた天才の名にふさわしいものだった。
セントライト記念(G2)でまさかの落馬競走中止。条件戦を勝って挑んだ2007年シーズン初頭のAJCC(Jpn2)で初重賞勝ちを記録したものの、天皇賞(春)(G1)11着、確勝を期した札幌記念(Jpn2)7着。オールカマー(G2)で重賞2勝目を記録したものの天皇賞(秋)(G1)は15着。すっかり人気を落とした有馬記念(G1)であっと驚く快走劇を見せてくれた。
ダイワスカーレットもダイワメジャーも、同期の2冠馬メイショウサムソンもジャパンカップ(G1)2着のポップロックもウオッカも。気分よく先行したときのマツリダゴッホの敵ではなかった。ダイワスカーレットをマークするようにレースを進めたマツリダゴッホは、4コーナーをまわって先頭に立つと、たった1頭で坂を駆け上がってゴールを駆けた。この勝利でマツリダゴッホはサンデーサイレンス産駒として通算71勝目、42頭目のG1ウイナーとなった。
その後、オールカマー3連覇、中山競馬場重賞6勝など数々を残して2009年に引退。現在は新ひだか町のレックススタッドで種牡馬となっている。2010年シーズンの配合数は日高地区の新種牡馬としては最高の128頭。種牡馬としても、これ以上ない好スタートをきった。
同馬を管理する(株)レックスの海老原雄二さんは「種牡馬としての成功を確信するような要因をたくさん持っています」と期待している。2歳夏のデビュー戦から優れたレースを見せてくれたこと。オールカマー3連覇など長くタフに活躍したこと。脚部不安に悩まされたことのない健康な馬体。そして中山競馬場で必要とされる器用さ、加速力、持久力においてはサンデーサイレンス産駒でも屈指の能力を見せてくれたこと」などをあげてくれた。
放牧地では、誰に邪魔されることなく、気分よく、思う存分に走り回っている。「気の強さや種付けに対する意欲はサンデーサイレンス譲りです。後継種牡馬はたくさんいますが、この馬が見せたトップパフォーマンスはヒケを取らないと考えています」と来春に産声をあげる初年度産駒を楽しみにしている。