フォーティナイナーを訪ねて~JBBA静内種馬場
日本軽種馬協会静内種馬場の広い放牧地。その一番奥にフォーティナイナーがいる。オグリキャップやスーパークリーク、ヤエノムテキらと同世代の25歳。肉付きがよく、外見からは年齢を感じさせない。
さすがは北米のクラシックウイナーにして、チャンピオンサイアー。今では世界中にその血を広げている“サイアーオブサイアーズ”だ。幾度となくあった買戻しのオファーを断り続け、日本の馬産界発展のために尽力した。
「現役種牡馬時代に乗り運動をすると、若い馬よりも前に出ようとする、そんなタイプでしたね」と同協会の遊佐繁基種馬課長が懐かしむ。
そんなフォーティナイナーが種牡馬引退を告げられたのは2007年のシーズン終了後だ。この年、いつものように種付けを開始したものの、受胎率が急落。結局の19頭の繁殖牝馬に配合したもののわずか3頭の産駒を得るにとどまった。その最後の世代がデビュー年度を迎えている。まだ勝ち上がった馬はいないものの、テイエムオジャンセは7月の新馬戦で2着なって希望をつなげている。
“フォーティナイナー種牡馬引退”。あれから3年の歳月が流れたが、馬自身はとても元気に見える。「ずっと気持ちの若い馬でしたから、やっと自分の年齢に気付いたんじゃないかな。少しは落ち着いてきましたよ」と冗談交じりに近況を話してくれた。
「本当の意味で功労馬といってよいと思います。直仔も走りましたし、孫、ひ孫の代になっても影響力を残してくれています。それに、スタッフはこの馬から学んだことは多いと思います」と遊佐課長。フォーティナイナーが来日を果たしてから15年。ともに喜び、ともに悩み、哀しみも味わった。名実ともに最良の後継馬と目されたコロナドズクエストの早世には心を痛めたという。
「1年でも長く生きて欲しいですね。今年が終われば、また来年。来年が過ぎれば再来年と、1年々々を大切にしていきたいと思います」という有里正人厩舎長以下、スタッフ全員に暖かく見守られているフォーティナイナーは幸せそうだった。