タップダンスシチーを訪ねて~ブリーダーズスタリオンステーション
“孤高”「俗世間から離れて、ひとり自分の志を守ること。また、そのさま」(大辞泉より)
やや広めに採られている日高町、ブリーダーズスタリオンステーションの放牧地。それでも、所狭しと動き回るタップダンスシチーがいた。何か興味深いものがありそうな気配でもなければ、おいしそうな牧草を探しているわけでもなさそうだ。時折、思い出したように走り回って存在をアピールしている。やや三白眼的な、ギョロっとした目が威圧感を醸し出している。13歳。来年は6年目のシーズンを迎えようとしているが、あまり無駄な肉がなく、精悍さを醸し出している。
「なんか、不思議な馬なんですよね。自分の世界を持っている馬です」と同スタリオンの坂本教文主任が同馬に視線を送る。「常にマイペースですね。だから、現役時代のイメージそのままですよ」と笑った。まだ若かった時は隣接する放牧地の馬を威嚇したり、挑発に乗ったりもしていたが、今はそんな素振りも見せないらしい。「ステイゴールドがちょっかい出しても動じないのですから、やっぱり大物だと思いますよ」と笑った。
史上2頭目の同一重賞3連覇。30回に及ぶジャパンカップ(G1)の歴史の中での最大着差勝利。外国産競走馬の賞金王。数々の勲章を持つこの馬の最大の持ち味は「スタートからハイラップを刻んで後続のスタミナを奪う」戦法だった。その結果、自身3度のレコード勝ちを記録した。スタートからよどみないペースで逃げるために、ゼンノロブロイが勝った有馬記念(G1)、アルカセットの勝ったジャパンカップ(G1)などレコード決着の演出もした。
高い競走能力。そして、叔母にウイニングカラーズ(ケンタッキーダービー(G1))らがいる血統背景も含め、生産者の評価も高く5年間種牡馬生活で延べ500頭近い繁殖牝馬に配合している。その中から秋華賞(G1)にも出走したアンティフリーズや関東オークス(Jpn3)3着のギンガセブンなどを出して期待に応えている。
「能力の高さは誰もが認めるところでしょうし、血統も良いですからね。やや晩成型のきらいはありますけど、きっとまだまだ大物を出してくれると思います」と坂本さん。「父のプレザントタップが10月に亡くなっているので、後継種牡馬として頑張って欲しいですね。でも、この馬はそんなことにはわれ関せずで頑張ってくれると思います」と信頼されている。