サウスヴィグラスを訪ねて~アロースタッド
「普段はおとなしい馬なんだよね。どこにあれほどのスピードがあるんだろうって思うくらい」というのはアロースタッドの本間一幸主任だ。
背が低く、骨太で、筋肉質な体。現役時代から500キロの栗毛の馬体は、ひとまわり貫禄を増している。ずんぐりといっては失礼だが、スマートという言葉とはちょっと遠いところにある。
「人間でもそうだけど、スプリンターは筋肉隆々だろ。この馬もそんなタイプだよ」という言葉を待つまでもなく、全16勝を1400m以下で記録した。そして、33戦のキャリアすべてを1600m以下のレースで積み上げた。
わずか1000mの距離で後続を4馬身突き放した北海道スプリントC(G3)にも驚かされたが、引退レースとなったJBCスプリント(Jpn1)も印象深い。休み明けの東京ダービー馬ナイキアディライトが先行する展開。2番手からレースを進めたサウスヴィグラスが早めに抜け出し、猛然と追い込んだマイネルセレクトをハナ差抑えて優勝した。この年、同レースは大井競馬場のスタンド改修工事により1190mで行なわれていた。競馬は、レースはそんな単純なものではないとはいえ、あと10mあれば1、2着は逆転していたと思える脚色だっただけに、このレースは語り草にもなっている。
早世の名種牡馬エンドスウィープの後継種牡馬として、またG1ウイナーの看板とともに種牡馬となったサウスヴィグラスを待っていたのは150頭の花嫁だった。もっともエンドスウィープの現役時代と似た競走成績だったことも生産者の背中を押したのかもしれない。
そして、デビューした産駒は予想どおり、いや予想以上によく走った。ナムラタイタン、トーホウドルチェ、そしてラブミーチャン。エンドスウィープがアドマイヤムーンやスイープトウショウなど自身の現役時代のイメージとはほど遠い産駒を送り出すのに対してサウスヴィグラスは自身を彷彿させる産駒を続出させた。
そして、2010年は212頭の繁殖牝馬が同馬の血を求めた。もちろん、日高地区繋養種牡馬としては最多の数字だ。「受胎率が良いことはもちろんですが、シーズンをとおして、休むことなくコンスタンに種付けできたことが大きいと思います」と本間さん。出走率の高さ、勝ち上がり率の高さを考えれば、産駒数の増加によりさらなる活躍が期待できる。
これからもサウスヴィグラス産駒からは目が離せそうもない。