重賞ウィナーレポート

2021年10月03日 スプリンターズS G1

2021年10月03日 中山競馬場 晴 良 芝 1200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ピクシーナイト

プロフィール

生年月日
2018年05月14日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:8戦3勝
総収得賞金
227,642,000円
モーリス
母 (母父)
ピクシーホロウ  by  キングヘイロー
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
音無 秀孝
騎手
福永 祐一
  • 7月中旬から厩舎の場所が移動している
    7月中旬から厩舎の場所が移動している
  • この場所は、育成スタッフ時代に所属していた厩舎ともなる
    この場所は、育成スタッフ時代に所属していた厩舎ともなる

 モーリスが送り出した、最初のG1馬となったピクシーナイト。スプリンターズS(G1)を3歳馬が勝利するのは、2007年のアストンマーチャン以来、14年ぶりの快挙となった。

 そして、育成を手掛けたノーザンファーム早来の桑田厩舎にとっても、ピクシーナイトが育成馬では初めてのG1馬となっている。

 「ゴールの瞬間は感動しました。厩舎としても、想定していたより早かったような印象もありますし、ピクシーナイトも本格化するのは来年以降と思っていただけに、それもまた想定外でした」と笑顔を浮かべるのは桑田裕規厩舎長。想定外だったと言えるのは、ピクシーナイトのスプリント適性とも言えるが、実際に育成時のピクシーナイトに跨ってきた桑田厩舎長も、大型馬かつ、フットワークの大きさからして、マイル向きの馬ではないかと思っていた。

 「前向きさはありましたが、我慢もできる馬だったので、父のようにマイルから更に距離を伸ばしても対応できると思っていました。それでもレースで行きたがっていたところや、スピード能力の高さを見た陣営が、スプリント適性を見出してくれたのでしょう」と話す桑田厩舎長にとって、それが証明されたレースが、初重賞制覇となったシンザン記念(G3)だったと語る。

 「好スタートからハナを奪った形のレースとなりましたが、テンに行く馬がいなかったことや、スピードの違いで押し出された形になったレースとも言えました」(桑田厩舎長)

 その後のアーリントンC(G3)、NHKマイルC(G1)でも前で競馬をしていたピクシーナイトであったが、いくらスピードの違いでハナに立ったとしても、目標とされるがばかりに勝ちきれないレースが続いていた。

 転機となったのはCBC賞(G3)である。初のスプリント戦だけでなく、古馬とも初対戦となったレースで2着に入った姿に、桑田厩舎長はピクシーナイトの新たな可能性を感じ取る。

 「特にCBC賞(G3)は最後の直線で勝ち馬との差も詰めていましたし、2着とは言えども、いい時計で走ってくれました。セントウルS(G2)はスプリントの一線級とのレースとなりましたが、そこでも外枠の不利を感じさせないほどの末脚を見せてくれましたし、これならスプリンターズS(G1)でもいいところはあるのではと思っていました」(桑田厩舎長)

 外枠を引いていたこれまでの2戦とは違って、2枠4番からの出走となったスプリンターズS(G1)。その利を生かすかのように好位でレースを進めたピクシーナイトは、ラスト一ハロンを過ぎたあたりで、前を行くモズスーパーフレアとビアンフェの間を縫って、一気に先頭へと躍り出る。

 「まだ後ろからのレースとなるのではと思っていただけに、あの位置取りには驚きました。枠だけでなく、位置取りや展開も含めて、全てピクシーナイトに適したレースとなりましたし、ゴール前で抜け出てきた時には、どこか安心して見ていられました」(桑田厩舎長)

 ゴール後、桑田厩舎長のスマートフォンには立て続けにお祝いの連絡が届き始めた。「それもまた嬉しかった」と話すが、だからとはいって、この結果に決して甘んじてはいない。

 「今年で厩舎長となって5年目となりますが、それぞれの世代で目標を立てて、これまでの課題も整理しながら調教を続けてきました。それが1つずつ噛み合ってきた印象もありましたし、特にピクシーナイトの世代からは調教の内容も強くしていっただけでなく、その過程を共に培ってきたスタッフと共にチームとしての統一感もあっただけに、みんなで勝ち取れたG1だとも思います」(桑田厩舎長)

 現在は新しい厩舎スタッフと共に仕事をしている桑田厩舎長であるが、これまで培ってきた厩舎運営や、育成馬の管理はそこでも役立てられようとしている。

 「今後もスタッフと協力しあいながら、調教を行っていくだけでなく、時にはスタッフのことを支えていけるような余裕のある仕事をしていきたいです。勿論、ピクシーナイトもこれから芝のスプリント界を背負っていける存在だと思いますが、今のスタッフともG1馬を送り出したいですね」そう話した桑田厩舎長の言葉は、実に力強かった。