重賞ウイナーレポート

2019年02月03日 きさらぎ賞 G3

2019年02月03日 京都競馬場 雨 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ダノンチェイサー

プロフィール

生年月日
2016年02月06日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:5戦3勝
総収得賞金
58,712,000円
ディープインパクト
母 (母父)
サミター(GB) by ロックオブジブラルタル(IRE)
馬主
(株) ダノックス
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
池江 泰寿
騎手
川田 将雅

 競走馬は血統という分かりやすいバックボーンを持つ。近年ではそこにせりでの取引価格といった、額面情報を持った馬も現れてきた。

 取引価格は競走馬にとって絶対能力の証明とはならない。それでもせりなどで取引された高額落札馬は、どれだけの金額となっても手に入れたいというオーナーの思いであり、同様に考えているオーナーも他にいるからこそ、落札額は期待値として跳ね上がっていく。

 17年のセレクトセール。父にディープインパクト、母はG1で2勝をあげた「サミターの2016」という上場名の牡馬を、(株)ダノックスが2億7,000万円(税込)で落札した。ちなみにこの落札価格はその年の1歳市場において、3番目という高額落札馬でもある。

 その前年に行われた16年のセレクトセールの当歳市場において、トップタイの取引額である3億240万円(税込)の評価を受けたのが、全兄に菊花賞(G1)と有馬記念(G1)の勝ち馬となった、サトノダイヤモンドを持つ上場馬名「マルペンサの2016」(もう一頭は上場馬名「イルーシヴウェーヴの2016」で、競走馬名はサトノソロモン)である。

 このセレクトセールの時点から、多大なる期待と共に注目度も背負った、「サミターの2016」と「マルペンサの2016」であるが、共に騎乗育成をノーザンファーム空港のR厩舎で行われることとなった。

 2月3日はその2頭が、その期待に応えた1日となった。サトノジェネシスと名付けられた「マルペンサの2016」は、日本ダービー(G1)と全く同じ、東京競馬場の芝2400mで行われたゆりかもめ賞を勝利。そして、ダノンチェイサーと名付けられた「サミターの2016」も、京都競馬場で行われたきさらぎ賞(G3)を快勝。デビュー前から注目を集めていた2頭の勝利は、次の日のスポーツ新聞の競馬面でも大きく取り上げられた。

 「2頭共にデビュー前から注目を集めていた馬ですし、同じ日に先へと繋がるような勝利をあげてくれたことには嬉しさだけでなく、どこかホッとした気持ちもあります」と話してくれるのは、2頭の騎乗育成を手がけたR厩舎の佐々木淳吏厩舎長。2億を超えるような評価を与えられた競走馬を2頭も、無事に競馬場まで送り届けていくプレッシャーもかなりのものがあったのではないかと思うが、「自分たちだけでなく、2頭共にノーザンファームしがらきのスタッフや、所属先となった池江厩舎、堀厩舎のスタッフの皆さんや先を見据えて進めてくれたことが、こうして最良の結果となって現れたと思っています」と佐々木厩舎長は関係者への感謝を口にする。

 サトノジェネシスの嬉しい話も、そう遠くない時期に佐々木厩舎長から話を聞けることになりそうではあるが、今回は重賞馬となったダノンチェイサーについて、育成時における印象を聞いてみたい。

 「ダノンチェイサーはこの厩舎に来た頃から、まさに『牡馬』といった我の強さがありました。それは調教を重ねて行くにつれて、走りたいという気持ちが全面に押し出されてくるようにもなりました」

 父ディープインパクトと、母父ロックオブジブラルタルの配合馬でもあるダノンチェイサーだが、実はR厩舎では同じ血統背景を持つミッキーアイルの調教も行っていた。

 「ミッキーアイルはマイルを中心にスピード能力の違いを証明してくれましたが、ダノンチェイサーはまだ距離も持たせられるのではとも感じていました。普段の調教ではあまりやり過ぎないようにと気をつける一方で、坂路でも我慢をさせることを教えていきました」

 2歳の7月、芝2000mの条件で行われたメイクデビュー中京。前評判の高さを物語るように、単勝1.9倍という圧倒的な支持で迎え入れられたダノンチェイサーであるが、最後の直線で脚を伸ばせずに4着に敗れている。

 「ディープインパクト産駒にしてはしっかりとしていた馬でしたが、それでも後躯などには緩さも残っており、本当に良くなってくるのはまだ先だと見ていました。メイクデビューは道中も力の入った走りをしていましたし、敗れたと言えども、決して悲観する内容では無いと思っていました」

 続く2歳未勝利戦で初勝利をあげると、4戦目のこうやまき賞を勝利してオープン入り。佐々木厩舎長の話す通りに、ダノンチェイサーは心身共に成長していく姿をレースで見せていく。

 このきさらぎ賞(G3)では逃げたランスオブプラーナを前に置きながら2番手を追走。最後の直線でゴーサインが出ると、残り1ハロン過ぎで一気に交わし去り、そのままセーフティリードを保ちながら先頭でゴール板を駆け抜けた。

 この勝利で賞金面でのクラシック出走を確実とさせたダノンチェイサーであるが、佐々木厩舎長にとっては、それ以外にも嬉しいことがあった。

 「オーナー((株)ダノックス)には普段から大変お世話になっていましたが、実は育成馬ではダノンゴーゴー(ファルコンS(Jpn3)以来の重賞勝利となります。これまで育成馬では、なかなか結果を出せていなかっただけに、ダノンチェイサーには更に大きなタイトルのレースでも活躍を続けて、オーナーに恩返しができたらと思っています」

 R厩舎を巣立った育成馬は、ダノンチェイサーやサトノジェネシスの他にも、今年のクラシック戦線を沸かせてくれそうな逸材が揃っている。

 「素晴らしい馬を預けてくださっているオーナーや調教師の皆さんのおかげです。また、厩舎スタッフも、同じ高みを目指しながら一生懸命に仕事をしてくれていますし、恵まれた環境で仕事をさせてもらっているからこそ、多くの方と喜びを分かち合える馬を送り出していきたいです」

 レース後、皐月賞(G1)へ直行することが発表されたダノンチェイサー。そこにはサトノジェネシスだけでなく、多くの育成馬たちが「R厩舎同窓会」と言える程にゲート内にずらりと並んでいるのかもしれない。