重賞ウィナーレポート

2017年11月03日 ファンタジーS G3

2017年11月03日 京都競馬場 晴 良 芝 1400m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ベルーガ

プロフィール

生年月日
2015年02月11日 02歳
性別/毛色
牝/青毛
戦績
国内:2戦2勝
総収得賞金
44,618,000円
キンシャサノキセキ(AUS)
母 (母父)
アドマイヤライト  by  Kris S.(USA)
馬主
R.アンダーソン
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
中内田 充正
騎手
C.デムーロ

 厩舎長として手がけた最初の世代となるアドマイヤミヤビが今年のクイーンC(G3)を優勝。そして育成馬では2年目の世代となるベルーガがファンタジーS(G3)を勝利。幾多の名牝が送り出された建物を引き継いだノーザンファーム早来の村上厩舎は、確実に厩舎力が上がっている事実を、この結果からも証明している。

 「ベルーガは父の産駒らしい高いスピード能力を持ち合わせていた一方で、ムキになって走らなかったので、マイルまでならこなしてくれるのではと思っていました」とは村上隆博厩舎長。仕上がりも早く、北海道開催でのデビューを見越して函館競馬場に入厩。その後、ゲート試験もクリアするもベルーガは再び村上厩舎へと戻ってきた。

 「競馬場に入ってから疲れが出たことも含め、牧場でしっかりさせたいとの意図もありました。こちらでは疲れのケアをしながら調整を始めたのですが、その際、再入厩に向けてのプランを立ててくれただけでなく、中内田先生とのコミュニケーションも取ってくれたのが、日下調教主任でした」

 村上厩舎の前、この建物で育成馬を管理していたのが当時は厩舎長を務めていた日下調教主任であり、その時、日下調教主任の右腕となっていたのが村上厩舎長だった。それだけに厩舎長としての仕事だけでなく、この建物も任された時にはプレッシャーもあったとも話す。

 「日下さんの後を任せてもらっただけに、最初の年はとにかく必死でした。その中からアドマイヤミヤビが厩舎にとっての初勝利と初重賞制覇を果たしてくれて、ホッとしたのと同時に、これを毎年続けていかなればいけないという責任感も生まれてきました」

 毎年のように育成馬から重賞馬を送り出してきた厩舎長。それが当時の日下調教主任だった。その姿を長きに渡って見てきた村上厩舎長は、それがどれだけ大変かということを誰よりも分かっていた。

 お互いの立場こそ変わったとは言え、馬を良くしていくという方向性には変わりは無かった。日下調教主任がサポートに入ってくれたことで、村上厩舎長はよりベルーガの状態を上げていくことに専念できるようになる。そのうち、北海道開催で勝たせるという具体的な目標が生まれ、8月上旬には競馬場へ再入厩。芝1200mで行われたメイクデビュー札幌では、1番人気の評価に応えて、見事、勝利を果たす。

 このファンタジーS(G3)は5番人気となったものの、後方から鋭く抜け出すと、逃げ込みを図っていたコーディエライトをゴール前で捕らえて優勝。デビュー戦から1ハロンの距離延長も全く関係としなかった快勝だった。

 「中内田先生や厩舎の皆さんとの連携も図れたからこそ、メイクデビュー勝利、そして重賞勝利へと繋げることができました。オーナー(R.アンダーソン氏)にとってもこれが中央の重賞では初勝利となりましたし、とても喜んでいただけたと聞いています。ノーザンファーム全体で取り組んできた『世界に通用するような強い馬づくり』を、ベルーガの活躍を通してアピールできたのなら、これほど嬉しいことがありません」

 ベルーガの次走は阪神JF(G1)を予定。ファンタジーS(G3)よりもう一ハロンの距離延長となるが、それでもしまいの脚色を見てもマイルでも問題にしないことは明らかであり、折り合い面の不安も見せていないことからして、いつでもあの末脚が使えるというのは最大のセールスポイントとなっていきそうだ。

 「この時期から重賞を勝ってくれたというのは、来年以降の競馬にも繋がっていきますし、2年目世代の中から、これほど早く重賞馬が出てくれたことも嬉しかったです。今後も日下さんや他の厩舎長とも協力し合い、そしてお互いに競い合いながら、更にノーザンファームが生産する牝馬の競走成績を上げていきたいと思います」

 厩舎長としての次なる目標は、勿論、育成馬のG1制覇。建物だけでなく、そこから生まれた名牝や、名牝と携わってきたホースマンたちとも密接な関係にあるベルーガは、その高みに立つバックボーンを十分に兼ね備えている。