重賞ウィナーレポート

2015年06月04日 兵庫ダービー(DW2015)

2015年06月04日 園田競馬場 晴 稍重 ダ 1870m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:インディウム

プロフィール

生年月日
2012年03月15日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:9戦8勝
総収得賞金
31,394,000円
パイロ(USA)
母 (母父)
セブンバイセブン  by  フォーティナイナー(USA)
馬主
窪田 康志
生産者
パカパカファーム (新冠)
調教師
田中 範雄
騎手
木村 健
  • インディウムの母セブンバイセブン(左)と今年生まれた当歳馬(右) ※写真/パカパカファーム提供
    インディウムの母セブンバイセブン(左)と今年生まれた当歳馬(右) ※写真/パカパカファーム提供
  • インディウムの半弟(牡当歳、父ローズキングダム)(右) ※写真/パカパカファーム提供
    インディウムの半弟(牡当歳、父ローズキングダム)(右) ※写真/パカパカファーム提供
  • お昼寝中の当歳馬 ※写真/パカパカファーム提供
    お昼寝中の当歳馬 ※写真/パカパカファーム提供
  • 広大で起伏のあるパカパカファームの放牧地
    広大で起伏のあるパカパカファームの放牧地
  • パカパカファーム厚賀分場の看板
    パカパカファーム厚賀分場の看板
  • 「In」とプリントされたインディウムのオリジナルキャップ
    「In」とプリントされたインディウムのオリジナルキャップ

 『ダービーウイーク2015』の第5戦は、園田競馬場が舞台の「兵庫ダービー」。デビューから8戦7勝のインディウムが1.5倍の圧倒的な支持を受け、中団追走から4コーナーを持ったままの手応えで先頭に立つと、直線では後続をどんどん引き離して7馬身差の圧勝。第16代の兵庫ダービー馬に輝くとともに、改めて潜在能力の高さを強く印象づけた。

 インディウムの生まれ故郷は、第79代日本ダービー馬ディープブリランテの生産牧場として名高いパカパカファーム。2001年に新冠町で創業し、現在は日高町厚賀の分場とあわせて230ヘクタールの広大な放牧地で、約30頭の繁殖牝馬とその産駒たちを管理している。ディープブリランテの他にも、2007年のNHKマイルC(Jpn1)を制したピンクカメオや、今年のNHKマイルC(G1)優勝馬クラリティスカイなどの活躍馬を生産。わずか15年の歴史の中で、3頭のG1馬を送り出しているのは驚異的だ。

 「ヒシウォーシイが2008年の東海ダービーに優勝していますので、ディープブリランテの日本ダービー(G1)とあわせて、今回が3度目の生産馬ダービー制覇なんです」と誇らしげに話すのは、パカパカファームの創業者ハリー・スウィーニィさん。ハリーさん自身は牧場での観戦となったが、コミュニケーション・マネージャーのケイト・ハンターさんが園田競馬場に出向き、インディウムを現地で応援していたそうだ。「インディウムのレースは何度か現地で見ているのですが、今回も素晴らしいレースでしたね。デビュー戦から圧倒的なパフォーマンスを見せてくれた期待の馬ですから、ダービー馬になってくれて本当に嬉しいです」と満面の笑みを浮かべてケイトさんは話してくれた。

 「生まれた時の体重は58kgと大きかったです。とてもバランスの良い馬体をしていて、父のパイロとよく似ていました。性格はおとなしい方で、難しいところはありませんでしたよ」とインディウムの幼少期を思い出すハリーさん。490kg前後に成長した現在の雄大な馬体と、兵庫ダービーでみせた中団で折り合える素直な気性は、インディウムが生まれ持って授かった才覚なのかもしれない。

 「うちの牧場では、離乳してすぐに昼夜放牧を行っています。広々とした起伏のある放牧地で長い時間を過ごすことにより、強い筋肉と丈夫な骨が自然につくられます。マイナス15℃にもなるような冬場も、昼夜放牧は休みません。ディープブリランテやクラリティスカイ、インディウムも、そうやって鍛えられました」と、パカパカファームから次々に活躍馬が誕生してくる秘訣をハリーさんは明かしてくれた。

 自信を持って1歳夏の北海道セレクションセールにインディウムを上場したパカパカファームだが、1度は主取りとなってしまう。「馬体は素晴らしかったので、すんなり決まるものと思っていたのですが、パイロの産駒がまだ本格的なデビュー前ということもあり、皆さん半信半疑だったのかもしれませんね。それでも兵庫の田中範雄調教師が何度も馬を見に来て、馬主さんと交渉していただき、再上場で無事に落札されました」と、インディウムの未来が拓けた経緯について教えてくれた。

 牧場には現在、今春に生まれたインディウムの半弟(牡当歳、父ローズキングダム)がいて、来年の北海道セレクションセール上場を目指しているという。「今年生まれた当歳馬はインディウムと雰囲気がよく似ていて、すごく良い馬ですよ。こちらは父がキングカメハメハ産駒のローズキングダムですから、芝・ダート両方で可能性がありますね」と期待を懸ける。

 「インディウムとは金属の名称なのですが、原子番号では49番に位置する元素なんです。母の名がセブンバイセブン(7×7)、その父がフォーティナイナー(49)ですから、選ばれし競走馬なのかもしれませんね」と話し、『In』と原子記号がプリントされたインディウムのオリジナルキャップを見せてくれた。ちょうど取材の前日、田中範雄調教師が牧場を訪れ、プレゼントしてくれたそうだ。

 インディウムの次走は、7月8日(水)に大井競馬場で行われる「ジャパンダートダービー(Jpn1)」。中央の強豪馬や他地区のダービー馬たちと力比べをする世紀の一戦だ。取材中に何度も「何番人気になる?」と尋ねてくるほど、ハリーさんもその頂上決戦を楽しみにしている。「前回の交流重賞『兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)』に挑戦したときは、初めて経験するペースに戸惑って自分の競馬ができなかったようですが、今回は2度目なので期待していますよ」とケイトさんも当日が待ち遠しいご様子。芝で頂点を極めたパカパカファームが、次に見つめているのは砂の頂上だ。