重賞ウィナーレポート

2015年06月01日 岩手ダービーダイヤモンドC(DW2015)

2015年06月01日 盛岡競馬場 晴 良 ダ 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ロールボヌール

プロフィール

生年月日
2012年05月16日 03歳
性別/毛色
牡/栗毛
戦績
国内:6戦6勝
総収得賞金
16,670,000円
フレンチデピュティ(USA)
母 (母父)
ロスグラシアレス  by  シンボリクリスエス(USA)
馬主
大久保 和夫
生産者
山下 恭茂 (荻伏)
調教師
千葉 幸喜
騎手
山本 聡哉
  • ロールボヌールの母ロスグラシアレスと今年生まれた当歳馬&生産者の山下恭茂さん
    ロールボヌールの母ロスグラシアレスと今年生まれた当歳馬&生産者の山下恭茂さん
  • 母のロスグラシアレスは今年8歳、これまでに4頭の仔を出産
    母のロスグラシアレスは今年8歳、これまでに4頭の仔を出産
  • ロールボヌールの半弟(牡当歳、父ヨハネスブルグ)
    ロールボヌールの半弟(牡当歳、父ヨハネスブルグ)
  • 山下恭茂牧場の放牧地
    山下恭茂牧場の放牧地
  • 山下恭茂牧場の厩舎
    山下恭茂牧場の厩舎

 『ダービーウイーク2015』の第2戦は、盛岡競馬場が舞台の「岩手ダービー ダイヤモンドカップ」。1.0倍と単勝元返しの圧倒的支持を受けたロールボヌールが危なげなく勝利し、デビューから負けなしの6戦6勝でダービーの勲章を手にした。

 ロールボヌールの生産者は、浦河町野深の山下恭茂さん。1940年創業と牧場の歴史は古く、恭茂さんは2代目として40年近くサラブレッドの生産をつづけている。創業者であるお父様の代には、バンブーアトラスが勝った日本ダービー(G1)の4着馬ミョウジンホマレなどを生産。恭茂さんの代となってからも、報知4歳牝馬特別(G2)で2着して桜花賞(G1)へも駒を進めたリスクフローラや、南関東の交流重賞で活躍したコスモプリズムなどを送り出してきた。8ヘクタールの放牧地に繁殖牝馬は5頭、ご夫婦2人で営む典型的な家族経営の牧場だ。

 インターネット中継でレースを観ていたという山下さんご夫婦。「圧倒的な人気になっていましたし、相手関係からも、普通に走ってくれれば負けないだろうと思っていました。4コーナーで少し詰め寄られたときはヒヤッとしましたが、終わってみれば圧勝でしたね」と、2着馬に10馬身差をつけたレースを振り返る。「1999年の栄城賞(佐賀)を生産馬のシゲノキューティーが勝っていますので、今回は2回目のダービー制覇になるんですが、やはりダービーは特別に嬉しいですね」と笑顔で話してくれた。

 「実は、2歳時の若駒賞と南部駒賞でロールボヌールの2着したスペクトルは、別の牧場の生産馬ですがリスクフローラの孫にあたるんですよ。スペクトルの母オトハチャンもJRAで3勝を挙げたうちの生産馬ですし、思い入れのある血統なんです。その2頭が重賞でワンツーするなんて、不思議な縁を感じますね」と、応接間に飾られたリスクフローラやオトハチャンの口取り写真を眺めながら懐かしそうな表情を浮かべる。

 2012年冬のジェイエス繁殖馬セールにて、フレンチデピュティの仔を受胎している状態のロスグラシアレスを購入した山下さん。「本当はエリモピクシーの血統が欲しくてセールに行ったのですが、高額で手が出なかったので、切り替えてロスグラシアレスを購入したんです。以前から、サンデーサイレンスの血が入った繁殖牝馬が1頭欲しいと思っていたのも決め手となりました」と母馬導入の経緯を話す。その4か月後に生まれてきた牡馬がロールボヌールだった。

 「母のロスグラシアレスにとっては初めての出産だったので、産んだあとしばらく立ち上がれない状態になりましたが、生まれてきた仔は馬体も良く元気いっぱいでした。その後は特に強調するようなエピソードもなく、1歳の春まで牧場で健やかに育ちました。性格はやんちゃな方でしたね」と幼少期のロールボヌールを振り返る。

 1歳夏のサマーセールで取り引きされたロールボヌールは、浦河町東幌別のMAXトレーニングファームで育成が施され、2歳8月に水沢競馬場でデビュー。初戦8馬身、2戦目(芝)4馬身、3戦目大差(2.5秒差)、4戦目6馬身差と2歳戦で圧勝をつづけ、冬季には南関東へ転厩。しかし南関東では一戦もせずに岩手競馬へ戻り、3歳初戦を9馬身差、そしてダービーで10馬身差と次元の違う走りをつづけてきた。「圧勝つづきですが、一度も本気で走ってない感じですからね。古馬や他地区の馬と走ってどんなものか、楽しみにしていたのですが…」。ロールボヌールは、岩手ダービー後に屈腱炎を発症していることが判明。年内は休養にあてられることが発表された。

 一方で母のロスグラシアレスは毎年、元気な仔を出産している。2番仔のノブアニバーサリー(牝2歳、父ロージズインメイ)は、ロールボヌールと同じくサマーセールで取り引きされて中央デビュー予定。3番仔(牝1歳、父ファルブラヴ)は中期育成中で、今春生まれた4番仔(牡当歳、父ヨハネスブルグ)は牧場の放牧地を元気に駆けまわっている。「2番仔ノブアニバーサリーのオーナーはTUBEの前田亘輝さんですから、デビューしたら注目されるかもしれませんね。今年生まれた当歳は大きな体をしていて、元気いっぱいです。とにかくみんな、無事に競走馬としてデビューしてくれることを願っています」と妹弟たちにも期待を寄せる。

 「ロールボヌールには、ゆっくり休んで心身ともに成長して戻ってきてほしいです。3歳春には中央のクラシック路線へ挑戦するプランもあったようですし、本気の走りで強い相手にどこまで迫れるか見てみたいですね」と夢を語ってくれた。同じ岩手競馬所属の先輩メイセイオペラがフェブラリーステークス(G1)を制してから16年。地方所属馬として2頭目の中央G1制覇を、ロールボヌールには夢見たくなる。