馬産地ニュース

胆振地区生産育成技術講座2017開催

  • 2017年11月01日
  • 講師を務めたJRA日高育成牧場業務課遠藤祥郎診療防疫係長
    講師を務めたJRA日高育成牧場業務課遠藤祥郎診療防疫係長
  • 主催者を代表してあいさつする胆振軽種馬農業協同組合青年部橋本善太副部長
    主催者を代表してあいさつする胆振軽種馬農業協同組合青年部橋本善太副部長
  • 200人以上が出席した胆振地区生産育成技術講座2017
    200人以上が出席した胆振地区生産育成技術講座2017

 10月30日夜、胆振軽種馬農業協同組合(田中芳郎代表理事組合長)と胆振軽種馬農業協同組合青年部(吉田正志部長)は、苫小牧市表町にあるグランドホテルニュー王子3階グランドホール南において、胆振地区生産育成技術講座2017を開催した。

 この講習会は同農協と青年部が共催し、毎年秋に専門家を講師に迎えて開催。今年はJRA日高育成牧場業務課遠藤祥郎診療防疫係長を講師に招き、「米国の生産・育成について①『ケンタッキーでの繁殖牝馬・子馬の飼養管理と獣医療』②『育成牧場でのブレーキングと競馬場での調教』」が演題となり、1時間30分ほどの講演が行われた。

 会場には農協組合員や青年部員をはじめ、胆振や日高の軽種馬生産育成牧場従業員を含め200人以上が出席。講習会の開催に先立ち、主催者を代表して青年部の橋本善太副部長は「本日は多数のご出席をいただき、誠にありがとうございます。また、講師を務めていただきます遠藤先生におかれましては、大変お忙しいところ、遠く浦河から苫小牧までお越しくださり、心より感謝申し上げます。今日は遠藤先生から、アメリカの生産と育成について、お話していただけることになりました。競馬やせりの国際化が進み、海外の事情については、あらゆる媒体から、多くの情報を得られる時代ですが、長期間牧場を空けて、それを実際に目で見て確かめることは、時間的にも、金銭的にも、なかなか難しいところがあります。今日は遠藤先生がこの2年間、現地でじかに見てきたこと、感じたことや、日本との違いなどについて、一つでも多く我々に教えて頂けたら、大変ありがたく思っております。講演の後には質疑の時間もご用意しておりますので、限られた時間ではありますが、参加者の皆様から活発なご質問を頂戴し、有意義な講習会にして頂けたらと思います」とあいさつした。

 講師の遠藤氏は北海道札幌市の出身。平成17年に帯広畜産大学畜産学部獣医学科を卒業後、JRA日本中央競馬会に入会。美浦トレーニングセンター競走馬診療所に勤務し、4年間、競走馬臨床に従事し、平成21年に日高育成牧場へ異動。

 診療のかたわら自らJRA育成馬の育成調教にも携わり、平成23年のニュージーランドトロフィー(G2)を制したエイシンオスマンや、平成23年の新潟2歳S(G3) を制したモンストールなどを手掛けた。その後、繁殖へ移りJRAホームブレッドを担当。平成25年の中京2歳Sなどを制したグランシェリーを育てた。平成25年に宮崎育成牧場へ異動し、こちらでも2年3か月間、診療を続けながら自らもJRA育成馬に騎乗。平成27年から海外生産育成調教実践研修で約2年間、米国へ派遣され、ダービーダンファーム、ウィンスターファーム、マーゴーファーム、スティーヴ・アスムッセン厩舎などでスタッフの一員として研修し、サラブレッドが生まれてから出走するまで、全てのステージを経験した。帰国後の平成29年3月に再び日高育成牧場へ赴任し、繁殖を担当。現在は米国で得た経験や知識を実践の場に取り入れるとともに、そのノウハウを広く啓蒙するため、講演会の講師として全国各地を飛び回っている。また、今年9月には山口大学より博士(獣医学)の学位を授与されたという。

 遠藤氏は日本と米国を比較して、馬産全体の違い、繁殖牝馬の飼養管理の違い、米国の分娩法、当歳馬の飼養管理の違い、子馬の肢軸異常、予防接種、駆虫の方法、1歳馬の管理の違い、せり上場馬の放牧方法、GPS調査、飼料、育成調教全体の違い、組織体系、ブレーキング方法、育成牧場での調教、競走馬の調教の違い、飼養管理、2歳と古馬の調教法などをスライドと動画、レース映像などを紹介。米国は生産牧場、育成牧場、競馬場で役割分担がはっきりしており、非常に合理的であるとした。

 出席者は「毎年、講習会には参加していますが今年は特に面白かったです」、「自分もアメリカのコンサイナーの牧場で働いた経験がありますが、その時と比較しても面白いお話が聞けて勉強になりました」、「お産の介助や生後2週齢での放牧方法などとても興味深く印象に残りました」と感想を口にし会場を後にした。