馬産地コラム

エンパイアメーカーを訪ねて~JBBA静内種馬場

  • 2013年11月19日
  • エンパイアメーカー
    エンパイアメーカー
  • 芯の強い馬
    芯の強い馬
  • 体調面は安定して良好
    体調面は安定して良好
  • 本邦初年度産駒はいよいよ来年デビュー
    本邦初年度産駒はいよいよ来年デビュー

 新ひだか町の日本軽種馬協会・静内種馬場で繋養されているエンパイアメーカー(アメリカ産)を訪ねた。

 2000年生まれの13歳。日本での種牡馬生活は3シーズン目を終え、いよいよ来年、本邦初年度産駒がデビューする。

 「体調面は何の不安もありませんね。シーズン終了後も、安定して良い状態を維持しています。来季に向けて11月からは乗り運動をしていきます。」と、近況を語ってくれたのは、同種馬場の中西信吾場長。受胎率は良く、今年の交配頭数は192頭を記録し、相変わらず高い人気を誇っている。放牧地で会うと、カメラマンに気付くようにひょっと顔を上げて、再び草を食べ始めた。誰もが「いい馬だ」と発した馬体に、また同じ言葉をかけたくなる。ダートG1馬らしい豊富な筋骨を持ち合わせながら、俊敏で素軽い。顔の流星はまるで高級車だけにあるマークのように、独特の存在感を表している。

 「本当に賢い馬ですね。ブレないというか、芯がしっかりしている馬です。」彼の性格を知り抜いた中西場長の言葉を聞きながら、シャッター音を響かせる。その静かなオーラを前に、望遠レンズに添える手がブレを恐れている。

 アメリカのフランケル厩舎にいた頃、ベルモントS(G1)を制したことや、アメリカの大レースを制したこと。その輝かしい競走実績はもちろん、グングンと伸びていく種牡馬実績に、馬産地のホースマンは舌を巻いている。ワールドクラスの種牡馬であることを、誰もが認知し始めている。海の向こうではBCレディスクラシック(G1)を2連覇したロイヤルデルタや、クラシックを沸かせたパイオニアオブザナイル、ボーディマイスター、過去の優勝馬に名牝シーザリオがいるアメリカンオークス(G1)の勝ち馬エモリエントなど、すでに多数のG1馬を送り出している。その勢いは日本競馬にも届いている。外国産馬・持込馬としての産駒が快走を続け、重賞2勝馬フェデラリストを筆頭に、ダート路線で一線級と戦うイジゲン、着々と上のクラスへ進むアンアヴェンジド、オールドパサデナ、シンボリエンパイア、ティアモブリーオらの活躍は紛れもない事実として、エンパイアメーカーの看板を光らせている。

 「父の遺伝子を受け継ぎ、産駒は全体的に大きくて立派な馬が目立っています。すでに国内外の産駒成績から、芝でもダートでも、オールウェザーでも高い適性を示しましたし、距離の融通性も利きます。国内市場でも高額取引が頻発しており、今後も市場活性化につながるほどの成果を上げてくれるでしょう。来年の産駒デビューが今から楽しみです。」と、中西場長の表情は明るい。

 満を持しての“日本産・父エンパイアメーカー”が走り出すまで、一年を切った。来年の今頃、彼の名前はどのように競馬界を駆けめぐっているのだろう。花火が打ち上がる前のように、誰もが待ち遠しく上を見上げている。そうした高揚を知ってか知らずか、当の本馬は澄ました顔で、悠々と英気を養っている。