馬産地コラム

ダンスインザダークを訪ねて~ブリーダーズ・スタリオン・ステーション

  • 2013年10月17日
  • 名馬には、名馬の相がある。引き締まった表情が美しい
    名馬には、名馬の相がある。引き締まった表情が美しい
  • 立ちポーズには、凛とした雰囲気が漂う
    立ちポーズには、凛とした雰囲気が漂う
  • 軽快なキャンターも披露してくれた
    軽快なキャンターも披露してくれた
  • 大好きという砂浴び。このときばかりは子供のような表情になった
    大好きという砂浴び。このときばかりは子供のような表情になった

 “ミスター菊花賞”ダンスインザダークを、日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションに訪ねた。

 比較的奥まった場所にある放牧地。陽射しをさけるための立木がある放牧地だ。かつてはスターオブコジーンがすごし、ブラックホークも ここを使っていたこともある。20歳になったダンスインザダークが、そこで静かに過ごしている。

 「昔のことはよくわかりませんが、今は静かに過ごすことが多いようです。おとなしいというよりも、堂々としているという表現の方が正しいかもしれません。ほかの馬にちょっかいだされても、あまり気にする様子はありません」と、スタリオンの坂本教文主任が現況を教えてくれた。

 現役時代は500キロを超える雄大な馬格。6月生まれながら、2歳時から威圧感のある馬体で活躍した。デビュー戦快勝後、クラシックの登竜門といわれるラジオたんぱ杯3歳S(G3)(現2歳S)に出走。ロイヤルタッチ、イシノサンデーには敗れたものの遊び々々走りながら前を追う同馬に豊かな将来性を垣間見た人は多かったはずだ。一息いれたきさらぎ賞(G3)は再びロイヤルタッチに敗れたもののクビ差まで迫り、弥生賞(G2)で重賞初制覇。体調を崩し、皐月賞(G1)を断念せざるを得ない状況で出走したダービー(G1)は、直線で1度は先頭にたったもののフサイチコンコルドの強襲にあって2着。多くの人のため息を誘ったが、そのレースがダンスインザダークが他馬の後塵を拝した最後のレースとなった。

 秋。京都新聞杯(G2)で完成したサラブレッドの強さを見せて迎えた第57回菊花賞(G1)。追いすがるロイヤルタッチ、フサイチコンコルドを33秒8の末脚で一蹴。強いということは、美しいということを教えてくれた。

 「(ダンスインザダークは)頭の良い馬です。人間が何を求めているのか、自分の仕事は何なのかということを理解しています」と坂本さんはいう。今は体を休めるとき。来たるべきシーズンに向けて鋭気を養っている。坂本さんが呼べば、遠くにいても近づいてくるし、カメラを向ければ顔をつくってくれる。

 「菊花賞(G1)に勝って、3頭の菊花賞馬の父になってくれました。これって凄いことだと思います」と胸を張り「最近は母の父としての評価が高まっています。たいへん嬉しいことではありますが、できることなら、もう1頭。若いサンデーサイレンス系種牡馬に負けないような後継種牡馬候補になるような馬を出して欲しいと思っています」とインタビューを締めくくってくれた。