馬産地コラム

クロフネを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • 2012年11月30日
  • クロフネ
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 2001年のジャパンカップダート(G1)で衝撃のレコード勝ちを収めたクロフネは、現在北海道安平町の社台スタリオンステーションで種牡馬生活を送っている。普段は一般の見学台がおかれている放牧地にいて、時間内であれば元気な姿を誰でも見ることができるのが嬉しい。14歳になった馬体はさらに白さを増しているが、躍動感にあふれた現役時代同様に今も放牧地を歩き回って存在感をあらわにしている。

 すぐ隣の放牧地にはディープインパクトとダイワメジャーがいて、豪華ラインナップの競演だ。しかも、栗毛のダイワメジャー、黒っぽい鹿毛のディープインパクトと14歳になって白さを増したクロフネの3頭が織り成すコントラストは、それぞれが競馬場に残した偉大なる足跡を別にしても、訪れるファンの目を楽しませている。

 そんなクロフネについて「2012年シーズンもクロフネにとって良いシーズンを送ることができました」と社台スタリオンステーションの徳武英介さんは満足そうに1年を振り返った。

 春シーズンはカレンチャンが高松宮記念(G1)に優勝。ホエールキャプチャはヴィクトリアマイル(G1)で悲願の戴冠を果たし、来春のクラシックを目指す明け3歳世代には函館2歳S(G3)に勝利したストークアンドレイがいる。

 「とにかく勝馬数、勝利数の多い種牡馬で、2007年に種牡馬ランキングのベストテンに入ってからも堅実な成績を残しています。昨年は総合ランキングで2位でした。派手な存在ではないかもしれませんが、言うまでもなく非サンデーサイレンス系種牡馬の柱といえる存在です」と胸を張った。

 芝で一流。ダート超一流。 武蔵野S(G3)、ジャパンカップダート(G1)の印象が強いためにダート馬のイメージが強いが3歳春は毎日杯(G3)を5馬身差で圧勝し、NHKマイルカップ(G1)で豪快な追い込みを決めている。JRA史上初の芝、ダート双方のG1ウイナーで、国際フリーハンデでは3歳ダート部門のマイル王に評価された。それがクロフネだ。

 「もうすっかり有名になってしまったことですが、勝利数はダートの方が多く、JRA重賞勝利をすべて芝コースで記録しているのが最大の特徴だと考えています。芝、ダート、性別など条件を問わずに活躍馬を送り出してくれるのが、種牡馬としての信頼の厚さにつながっていると思います」と高い評価を与えている。新馬、未勝利戦含む下級条件では狙ったレースに出走させることが難しい現状で、こうしたオールマイティな部分は得がたい武器にもなっている。それもまた、この馬が胸を張れる部分だ。

 もう間もなく忙しいシーズンがやってくる。「万全の体調でシーズンを送れるように、しっかりと準備をしたいと思います。それが、この馬を信じてくださる方々への恩返しだと考えています」と表情を引き締めている。