馬産地コラム

トウカイテイオーを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • 2012年01月11日
  • トウカイテイオー
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 数々の名勝負の舞台となってきた有馬記念。そのひとつに数えられるのが、1993年12月26日。トウカイテイオーが奇跡の復活を果たした第38回有馬記念(G1)だ。

 不敗の3冠馬シンボリルドルフの初年度産駒にして不敗の2冠馬。確実視された3冠は左後肢の骨折により夢に終わったが、翌年のジャパンカップ(G1)では2頭の英国ダービー馬、そして全欧年度代表馬らを相手に先頭ゴールインを果たしている。“世界の帝王”へと名のりをあげたが1番人気になった有馬記念(G1)は腰を痛めて大敗。翌年の宝塚記念(G1)で再起を目指したものの最終追いきり後に生涯3度目の骨折が判明。それでも、ちょうど1年ぶりとなった有馬記念(G1)で奇跡の復活。栄光と挫折を繰り返した競走生活だった。

 そんなトウカイテイオーも24歳。

 「変わらず、といったら嘘になりますが年齢なりに元気です。もともと少し神経質なところがありましたので、静かな環境に移動して体調も良さそうですよ」と報告してくれたのは同馬をけい養する社台スタリオンステーションのスタリオンスタッフ。毎年、大勢のファンの方がこの馬との再会を楽しみにスタリオンまで足を運んでくれていたのは十分に承知しているが、これも馬のためとご理解いただきたい。

 そんなトウカイテイオーに「パーソロンから続く貴重なサイアーライン。消長の激しい種牡馬の世界とはいえ、シンボリルドルフがその父パーソロン21歳時に生まれた産駒ということを考えれば、まだもう一花咲かせて欲しい」とエールを送るのは同スタリオンの徳武英介さんだった。たしかに実際にG1勝馬を出しているという事実は雄弁だ。

 放牧地で見せる軽やかなステップは、奇跡の貴公子といわれた現役時代から変わらぬ独特のもの。大きく崩れない体型もまた、本馬の健康状態を物語る。

 年齢とともに種付頭数は減少傾向だが、牝系をたどれば途絶えそうな危機を乗り越えてきたヒサトモ系。日本競馬史上初めてダービーを制したこの名牝は、1度は繁殖牝馬となったものの戦後の混乱期の中で現役に復帰。競馬場で非業の死を遂げている。残されたたった1頭の繁殖牝馬が血をつむいで、そして生まれたのがトウカイテイオーだ。逆境に強い血統だということはトウカイテイオー自身が、その競走生活で証明している。

 現実を見れば厳しい道のりであることは間違いないが、もう1度だけ、奇跡という言葉を信じてみたい。そんな気がする。