馬産地コラム

アグネスデジタルを訪ねて~ビッグレッドファーム

  • 2011年03月04日
  • アグネスデジタル~1
    アグネスデジタル~1
  • アグネスデジタル~2
    アグネスデジタル~2
  • 種牡馬展示会での様子
    種牡馬展示会での様子
  • 筋骨隆々の馬体
    筋骨隆々の馬体

 新冠町のビッグレッドファームへアグネスデジタル(USA)を訪ねた。種牡馬生活8年目を迎え、重賞勝ち馬も着実に輩出している。円熟味を増している一頭だ。

 どこまでも雪に広がった放牧地へ会いに行くと、かつて競い合ったイーグルカフェを柵越しに見ながら、悠々と過ごしていた。忙しい春を前にコンディションは万全の様子だ。同牧場の蛯名聡マネージャーは、「体調は何の問題もなく、元気ですね。種牡馬としての自覚もしっかり芽生えてきて、大人になってきました。見学されるファンも相変わらず多いですよ。」と、近況を語る。14歳となり、すっかり父としての風格が漂ってきた。幾多のG1を掴んだボディは今も惚れ惚れする肉体美を保ち、力強く雪をかきわける。

 アグネスデジタルは現役時代12勝。まるでゲームの世界から飛び出てきたような万能プレーヤーだった。香港C(G1)、天皇賞(秋)(G1)、フェブラリーS(G1)などG1勝ちは実に6勝。全国各地、海外でも勝利し、距離適性も幅広い。2歳から6歳まで第一線で強靭な力を発揮した。

 産駒は5世代がデビューし、JRA重賞を8勝。堅実に成果を挙げている。交配頭数は初年度から100頭超えをマークしており、昨年は124頭を数えた。生産者からの人気は確固たる高さにある。

 若き日の父を彷彿とさせるように、産駒の仕上がりは早く、それでいて古馬となってからも力をつけていく。女王ブエナビスタを撃破したヤマニンキングリーや、ダート路線で底を見せていないダイシンオレンジなど、大きな舞台に駒を進める馬も目立ってきた。蛯名マネージャーは、「サンデーサイレンス系牝馬との好相性はセールスポイントの一つですね。芝ダート問わないですし、スピードタイプもいれば、距離をこなせるタイプもいます。バラエティに富んだ産駒の現れが生産者、馬主を惹きつけていますね。」と、分析する。これまで重賞勝ち馬6頭のうち3頭が母の父サンデーサイレンス。トレンドに合った種牡馬の一頭だ。

 今年1月には産駒ダイシンオレンジが平安S(G3)を優勝。「ダイシンオレンジは種牡馬展示会の直前に重賞を勝ってくれて、PRにつながりますね。そろそろ勲章が欲しいです。」と、蛯名マネージャー。強豪馬を軒並み倒してきたアグネスデジタルを見てきたファンからすれば、産駒のG1勝ちに足踏みする姿はちょっともどかしさを覚えるだろう。彼の遺伝子ならばそんなやきもきもすぐに晴らしてくれると、信じて見守りたい。