馬産地コラム

トウカイテイオーを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • 2010年12月24日
  • トウカイテイオー~1
    トウカイテイオー~1
  • トウカイテイオー~2
    トウカイテイオー~2
  • トウカイテイオー~3
    トウカイテイオー~3

 “奇跡”とは「人間の力や自然現象を超えたできごと」らしい。で、あるならトウカイテイオーがいくたびか起こした奇跡は、奇跡ではない。必然だ。

 この日もそうだった。出走頭数はフルゲートに満たない14頭だったが、菊花賞馬ビワハヤヒデにジャパンカップ(G1)優勝のレガシーワールド。さらには強い3歳世代のダービー馬ウイニングチケット、春の天皇賞馬ライスシャワーに、2冠牝馬ベガ。さらには約1年ぶりの復帰戦で2着した前年の2歳チャンピオン、エルウェーウィンと近走は精彩を欠いていたとはいえ、前年の覇者メジロパーマー。トウカイテイオーを含め8頭のG1ウイナーが顔を揃えたこの1戦で、同馬は1年ぶりの出走にも関わらず、驚くべきパフォーマンスを見せてくれた。

 中363日のG1制覇は、もちろん史上最長。3度の骨折を乗り越え、1年のブランクを感じさせない1戦だった。

 結果的にトウカイテイオーの父となったシンボリルドルフの種付権利は、本当はトウカイナチュラルではなく、内村オーナーが所有するオークス馬トウカイローマンに配合するために用意されたものだった。トウカイローマンが現役生活を延長したために1歳年下の妹に配合し、生まれたのがトウカイテイオーだった。

 皐月賞のゴールは同じ三冠馬ミスターシービー産駒のシャコーグレイドを抑えてのものだった。不敗のままゴールを駆け抜けたダービー。不敗のダービー馬から不敗のダービー馬が生まれたのは日本競馬史上初のこと。本場の英国でもニジンスキーがゴールデンフリースとラムタラの2頭を残しているに過ぎない。ジャパンカップでの父仔制覇。そして有馬記念。トウカイテイオーは走るたびにドラマを残してくれた。

 そして現在は社台スタリオンステーションで種牡馬生活を送っている。年が明ければ23歳。美しい馬体と優雅な歩様はかつてのままだ。

 「真面目な馬なんです。常に張り詰めた緊張感を醸し出している思慮深い馬です」というのは同スタリオンの徳武英介さん。現在も一般見学可能な放牧地でその姿を確認できるが、当初は「性格的に見学には向かない」と言われたこともあるらしい。

 マイルチャンピオンシップ(G1)に勝ったトウカイポイント。ヤマニンシュクルは阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)に優勝してJRA賞最優秀2歳牝馬になった。ストロングブラッドは交流G1かしわ記念(G1)に優勝し、2歳、芝ダート双方のG1サイアーとなっている。

 「先日のジャパンカップで父のシンボリルドルフが年齢を感じさせない元気な姿を見せてくれました。まだまだ老け込むわけにはいかないです。万全の体制でシーズンを迎えたい」と期待する。故障に勝ち、レースに勝ち、多くのドラマを残してくれたトウカイテイオーが再びあっと驚くパフォーマンスを見せてくれることを信じたい。