馬産地コラム

アグネスデジタルを訪ねて~ビッグレッドファーム

  • 2010年10月19日
  • アグネスデジタル
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  • アグネスデジタル-2
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  • アグネスデジタル-3
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 敵役のヒーロー、それがアグネスデジタルだ。

 マイルチャンピオンシップ(G1)ではフジキセキ産駒として初のG1タイトルを狙ったダイタクリーヴァの希望を打ち砕き、天皇賞・秋(G1)ではクロフネから外国産馬の出走枠を奪う一方で、テイエムオペラオーに世代交代を突きつけた。さらに、翌年春のフェブラリーS(G1)では南関東の雄トーシンブリザードの挑戦を跳ね除け、日本調教馬として出走した香港C(G1)では、ゴドルフィン代表のトゥブーグを退けている。

 ただ強いだけではなく、憎らしいまでに強かった。確実に伸びる末脚は舞台が大きくなればなるほどに威力を増して、それは芝・ダート、中央・地方、国内外を問わずに、ライバルたちを捕らえた。

 「初年度産駒が5歳になりましたが、JRAの重賞だけでも7勝。期待通りの成績といって良いかもしれません。クラフティプロスペクターの仔ということで、産駒がデビューするまではどんなタイプの種牡馬になるんだろうという思いがありましたが、アグネスデジタルの良いところをいろいろな形で産駒に伝えてくれていますね」と事務局も満足そうだ。2010年シーズンもサウンドバリアーが桜花賞TRのフィリーズレビュー(G2)を、ダイシンオレンジがダートのアンタレスS(G3)を制して芝ダートで1勝ずつ数字を上乗せしている。

 「また、ヤマニンキングリー、ドリームシグナル、グランプリエンゼルがそうであるようにサンデーサイレンス系繁殖牝馬との相性の良さも感じています。本馬を超えるというのは簡単ではありませんが、まだ13歳と若く、今後の活躍を期待します」という。

 放牧地では、のんびりと過ごすわけではなく、元気のよさをアピールしている。現役時代は450キロ前後と決して大柄ではないが、体全体を使った大きなフットワークが印象的だった。そのフットワークはいまも健在だ。厩舎から引いて出されて、手綱を解き放たれると、長方形の放牧地を走りまわる。力強い後躯から繰り出される推進力を、遠くに投げ出すような前脚がしっかり受け止めている。

 やっと落ち着いて青草を口にしたのはひとしきりの運動を終えたあとのことだ。種牡馬生活7シーズン目を終えたばかりとは思えないほど筋肉を躍動させている。

 「2010年シーズンも124頭の繁殖牝馬に配合されました。多くの方に期待されている種牡馬なので、まずはG1タイトルが欲しいですね。そして、簡単なことではありませんが、自身を超える産駒を残して欲しい」と期待されている。