重賞ウィナーレポート

2018年04月08日 桜花賞 G1

2018年04月08日 阪神競馬場 晴 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:アーモンドアイ

プロフィール

生年月日
2015年03月10日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:4戦3勝
総収得賞金
1,519,563,000円
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
国枝 栄
騎手
C.ルメール

 今年の桜花賞(G1)のパドック。17頭の3歳牝馬たちが周回を重ねる中、育成を手がけたアーモンドアイの応援に駆けつけた、ノーザンファーム早来の岡真治厩舎長は、その状態の良さに目を奪われていた。

 「輸送はあまり得意では無いと聞いていたので、馬体重を大きく減らしてレースに臨むのではと思っていましたが、マイナス2kg(462kgでの出走)と、前走(シンザン記念(G3))とさほど変わっていませんでしたし、何よりも万全な状態で臨んできたようにも見えました」

 4歳の夏に調整でノーザンファーム早来に戻っていた際に、手綱を任されたフサイチパンドラの7番仔となるアーモンドアイ。その母は柔軟な乗り味で跳びも大きく、スピードの持続力を武器とするような走りをしていたが、アーモンドアイが武器としていたのは、異次元とも言える切れのある末脚。ただ、騎乗育成時においては、そこまでの末脚は感じられなかったという。

 「雄大な馬格を持った母のイメージからすると華奢な馬ではありましたが、それでも春先から一気に馬体が良くなり、ノーザンファーム天栄に送り出す頃には、トモの張りが一際目を引くようになりました。それでもこちらでは、そこまで速い時計の調教をしてはいなかっただけに、牧場を離れてから聞こえてきた評価の高さは驚きでした」

 アーモンドアイは移動先となったノーザンファーム天栄のスタッフだけでなく、国枝厩舎のスタッフからも、「もの凄くいい馬。特に速いところをやった時の走りが、他の馬とは全然違う」との評価が岡厩舎長の元に届けられる。その裏付けとなったのが、驚異的な末脚を見せた2歳未勝利戦であり、そして、稍重の馬場を苦にすることなく突き抜けたシンザン記念(G3)だった。

 阪神競馬場1600Mのコース形態としては、決して有利とは言えない7枠からの出走となったアーモンドアイ。コーディエライトが先手を奪い、シンザン記念(G3)を共に戦ったツヅミモンが2番手に待機したレースは、「魔の桜花賞ペース」とは無縁の比較的落ち着いた流れとなり、1000M通過のラップは58秒7。後方からレースを進めるアーモンドアイにとっては決して有利な展開とは言えなかった。

 「じっくりと脚を溜めていくとは考えていましたが、それでも、思った以上に後ろで待機していた時間が長かったので、大丈夫かな、と思ったのは事実でした」

 しかし、その心配は最後の直線でアーモンドアイが大外に進路を向けた時、一気に払拭される。最内枠の出走からロス無く競馬を進めたラッキーライラックが先頭に立ち、そのまま押し切ろうとするところを、馬場の真ん中から加速を続けていくアーモンドアイは、馬群だけでなく、一気にラッキーライラックまでを交わしていった。

 「直線を向いた時の勢いの違いを見たときに届くと思いましたし、ゴールの瞬間はこんな強い内容でG1レースで勝てるのかと驚いていました」

 岡厩舎長にとっては、2011年の秋華賞(G1)を制したアヴェンチュラ以来となる、育成馬でのG1勝利。その間には幾多のチャンスがあっただけでなく、時には競馬場で悔しい思いも目の当たりにしてきたが、アーモンドアイの次元が違う強さは、その悔しい思いを払拭してくれたどころか、更なる大きな夢も持たせてくれている。

 「日下(和博)調教主任からも、『末脚の凄さという意味では、ハープスターより上かもしれない』との言葉もかけてもらいました。牧場にいた頃から距離は長くてもいいと思っていた程に乗りやすい馬でもありましたし、輸送時間の短い東京競馬場なら更にいい状態で挑めるだけでなく、末脚が更に生かせる条件になると思っています」

 牝馬クラシック二冠当確の裏付けをしたような、岡厩舎長の言葉でもあるが、だからこそ、その向こうにある牝馬クラシック三冠制覇、そしてゆくゆくは、牡馬を一蹴するような活躍も期待したくなる。

 「自分もアーモンドアイの一ファンとして、今後の活躍が楽しみです。だからこそまずは無事に、次のレースを迎えてもらいたいと思います」

 5月20日のオークス(G1)。そこでアーモンドアイが再びセンセーショナルなレースを見せた時、「名牝」や「スーパーホース」の称号が、今後の彼女を表現する言葉となるのかもしれない。